道徳に教育勅語「否定せず」 教材活用を菅氏が容認 - 東京新聞(2017年4月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201704/CK2017040402000118.html
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菅義偉(すがよしひで)官房長官は三日の記者会見で、戦前教育の基本理念を示した教育勅語について、現在の道徳教育で教材として使うことを「否定できない」と述べた。教育勅語の教材活用を否定しないとした政府答弁書より具体的に、道徳教育での使用容認に踏み込んだ。安倍政権の中核を担う菅氏が勅語の意義を認めたことで、野党が批判を強めるのは確実だ。 
菅氏は記者会見で、道徳教育で使うことに問題はないかと問われ、「教育勅語にそうしたこと(道徳を説いた側面)があり、そこは否定できない」と説明。さらに「教育の唯一の根本とする指導は極めて不適切だが、『親を大切に』など普遍的なことまで否定すべきではない」と語った。
松野博一文部科学相衆院決算行政監視委員会で「歴史の理解を深める観点で用いることには問題がない」と述べるにとどめた。
教育勅語は、明治天皇が「臣民」に求める徳目を並べ、国や天皇に命をささげるよう求める軍国主義教育に結びついたとされる。戦後は「国民主権に反する」として衆参両院が排除・失効を決議している。当時の森戸辰男文部相は「過去の文献として扱い、かりそめにも神格化することのないように」と強調していた。
一方、保守層には教育勅語の道徳観を肯定する意見がある。大阪市の学校法人「森友学園」が系列幼稚園で園児に暗唱させたことに絡み、稲田朋美防衛相は国会で「核の部分は取り戻すべきだ」と発言。政府は先月末、憲法教育基本法等に反しないような形での教材活用を否定しないとする答弁書閣議決定していた。
元文科官僚の寺脇研・京都造形芸術大教授は「内容がいいなら、教育勅語を持ち出さずに教えればいい。教育勅語に書いてあるとの紹介は憲法に反する」と指摘。同時に「閣議決定憲法などに反しない形でと前提を置いており、歴史教育でしか使えない」と話した。

◆戦後、国会が排除・失効決議 一部で再評価の動き
教育勅語> 正式名は「教育ニ関スル勅語」。1890年に発布された。「朕(ちん)惟(おも)フニ」と始まり、明治憲法下で主権者だった天皇が「臣民」に12の徳目を示し、「子孫臣民のともに順守すべき」ものとされた。
徳目は、親孝行、兄弟仲良く、夫婦仲むつまじく、友人と信じ合い…と続き、最後に、危急の事態があれば「公に奉じ」て、永遠に続く皇室の運命を助けることを求めている。
学校教育を通じて国民に強制され、天皇制の精神的支柱となった。
国家統制が強まる中で神聖化が進み、天皇や国のために身をささげることを求める思想に利用され、特攻隊などを生み出す軍国主義教育に結び付いたとされる。
戦後、国会が排除・失効を決議した後も、一部の政財界人や学者、神社関係者らの間で再評価する言動が続いている。