(余録)学校法人「森友学園」を巡る騒動で… - 毎日新聞(2017年4月3日)

http://mainichi.jp/articles/20170403/ddm/001/070/156000c
http://archive.is/2017.04.03-011402/http://mainichi.jp/articles/20170403/ddm/001/070/156000c

学校法人「森友学園」を巡る騒動でにわかに今年の流行語大賞候補に浮上したのが「そんたく」だ。他人の心の内を推し量ることだが、国有地が格安で払い下げられ、認可手続きがスムーズに進んだ謎を解くキーワードのように使われている。
本紙ではひらがな表記を原則にしている。漢字で書けば、忖度(そんたく)。中国最古の詩集とされる「詩経」に「他人心(たにんこころ)有らば、予(われ)之(これ)を忖度す」という一文があるから、東アジアでは2000年以上もそんたくの歴史が続いてきたことになる。
相手の気持ちをおもんばかること自体は悪いことではない。しかし、官僚が権力者の心を読んで「これを望んでいらっしゃるだろう」と手心を加えるようなことがあるなら、民主主義とは程遠い。
英語に訳すのは難しく、同学園の籠池泰典前理事長が外国特派員協会で記者会見した際には通訳も苦労したらしい。単に「推測する」と訳してはニュアンスが伝わらない。「行間を読む」などと意訳するメディアもある。
フィナンシャル・タイムズ紙は「SONTAKU」をそのまま使い、森友問題だけでなく、東芝の経営危機の背景も説明できる言葉と紹介していた。東芝では不正会計処理問題などで「上司の意向」がそんたくされたという解説だ。
「空気を読む」も「行間を読む」と訳されることが多い。明確な指示がなくても空気や心の内を読んで物事が動くのは外国の人たちには不可思議だろう。公務を記録に残さないようなそんたくは今の時代に合わない。