ハンセン病隔離法廷、再審請求せず 検察、元患者側に謝罪 - 中日新聞(2017年3月31日)

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ハンセン病患者の裁判が、隔離先の療養所などに設置された「特別法廷」で開かれていた問題で、最高検は三十一日、最高裁が違法性を認めた一九六〇年以降の法廷に関与したことの責任を認め、謝罪を表明した。差別的な特別法廷を巡り、検察庁が謝罪するのは初めて。
元患者が特別法廷で死刑判決を受け、執行された「菊池事件」の弁護団最高検検事らが三十一日に熊本市で面会。「責任を感じている。おわびしたい」と書面を読み上げた。要請を受けていた菊池事件の再審請求は「事由がない」と回答した。弁護団が面会後の記者会見で明らかにした。不作為を問い、国家賠償請求訴訟を起こすとしている。
弁護団の徳田靖之団長は会見で「最高裁の調査に乗っただけ。再審請求しないのは、国家公務員としてのハンセン病の被害回復を図る義務を怠っている」と述べた。
全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)など三団体とその代理人弁護団が、憲法が定める裁判の公開原則違反や冤罪(えんざい)を訴え、再審請求するよう要請していた。
ハンセン病患者の特別法廷は、四八〜七二年に療養所や専用の刑事施設で九十五件開かれた。最高裁は昨年四月、医学的見地から隔離の必要がなくなった六〇年以降は「差別的で違法な運用だった」とする調査報告書を公表し、謝罪した。
刑事訴訟法は、無罪を宣告すべき明白な新証拠の発見などがあれば検察官や有罪判決を受けた本人らが再審請求できるとしている。

<菊池事件> ハンセン病の患者調査に関わっていた熊本県内の村職員を1952年に殺害したとして、元患者の藤本松夫元死刑囚=執行時(40)=が殺人罪に問われた事件。国立療養所菊池恵楓園内に熊本地裁が設けた「特別法廷」で審理された。無実を主張したが死刑判決を受け、57年に確定。凶器と被害者の傷が合わず、弁護活動も不十分だったとして3回の再審請求をしたが退けられ、62年9月に刑が執行された。事件の発生地名から菊池事件と呼ばれる。