最高裁が令状なしのGPS捜査を違法と断定 今後の犯罪捜査に与える深刻な影響とは(前田恒彦元特捜部主任検事) - Y!ニュース(2017年3月16日)

https://news.yahoo.co.jp/byline/maedatsunehiko/20170316-00068741/
http://megalodon.jp/2017-0316-0951-54/https://news.yahoo.co.jp:443/byline/maedatsunehiko/20170316-00068741/

警察が捜査対象者の車両に密かにGPS端末を取り付け、その位置情報を把握するGPS捜査。最高裁は、その法的論争に決着をつけた。しかも、今後の犯罪捜査に深刻な影響を与える厳しい内容だった。公開されている判決文(詳細はこちら)を踏まえ、その理由を示したい。

GPS捜査のパターン】
【捜査当局の見解を全否定した最高裁
憲法から結論を導く】
しかも、令状なしのGPS捜査を違法と断じた最高裁の理由付けは、次のとおり、憲法規定の解釈にまでさかのぼっており、全く文句のつけようがないものだった。
....

これまでの裁判では、もっぱらこの刑訴法のレベルで議論されてきたが、最高裁最高法規である憲法まで持ち出し、その原理原則論に基づいて決定的な判断を下した意義は、極めて大きい。
千葉県警方式】

【「検証許可状」でもダメ】

【立法措置を要求】

【裁判官全員一致の結論である上、補足意見も厳しい】

【残された解決すべき問題】

現に警察庁は、今回の最高裁判決を踏まえ、全国の警察本部に対し、GPS端末を使った捜査を控えるように指示する通達を出した。ただ、それで全ての問題が解決したわけではない。過去の清算も必要だからだ。

まず、GPS捜査の違法性を巡り、現在も進行中のいくつかの裁判があるが、これに少なからず影響を及ぼすことだろう。裁判所は他の証拠で有罪とするだろうが、少なくともGPS捜査で得た資料や情報などを証拠として使うことは認めないはずだ。検察自らその証拠請求を取り下げることも考えられる。

また、全国に目を向けると、冒頭で挙げた(3)(4)のケースのほか、暴力団事件や公安事件など、現在も内偵のために密かにGPS捜査を実施している事件があるのではなかろうか。

捜査対象者の車両から速やかにGPS端末を取り外さなければならず、彼らにその実施状況などを告げ、了承を得る必要があるだろう。既に終わった捜査ではあるが、(3)(4)のケースについても、事後的とは言え、同様だ。

彼らから国賠訴訟を起こされた場合には、その対応にも苦慮することだろう。

他方、国会審議を経た上で、早急にGPS捜査全般に関する特別な法律を作り、令状の名称や形式、裁判官による許可基準や条件など、GPS捜査を可能とする具体的な要件を定めておく必要がある。

限られた捜査員で悠長に尾行や張り込みをやっていては、昼夜を問わず車両を使って広域移動するような組織犯罪の犯人グループを取り逃がす結果となってしまうからだ。

この点、そもそも犯罪者のプライバシーを保護する必要などないし、今回の最高裁判決は犯罪者を利する結果となるもので、巧妙化する犯罪の取締りが困難となることから、あまりにも踏み込みすぎではないか、といった見方もあるだろう。

ただ、肌身離さず持ち歩くスマホの位置情報を入手することは、尾行や張り込みよりもプライバシー侵害の程度が大きく、捜査当局ですらも裁判官の令状が必要だと考え、現に令状を得てきた。

また、位置情報をキャッチし、捜査を進めたものの、後になって捜査当局の見込み違いだと分かり、立件に至らないケースもあり得る。冒頭で挙げた(4)のようなケースだ。

これを踏まえると、むしろ最高裁の判決は当然の流れと言えよう。