GPS捜査 明確なルールが必要だ - 秋田魁新報社(2017年3月1日)

http://www.sakigake.jp/news/article/20170301AK0012/
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捜査対象者の車などに裁判所の令状なしに衛星利用測位システム(GPS)端末を取り付ける捜査について、違法か適法かで司法の判断が割れている。捜査対象者のプライバシー侵害の程度をどう捉えるかという点への裁判所の評価が異なっているためだ。
そうした中、GPSを使った警察捜査の違法性が争われてきた窃盗事件で、最高裁大法廷は3月15日に上告審判決を言い渡すことを決めた。判決内容によっては今後のプライバシー保護や捜査の在り方に大きな影響を与えるだけに、最高裁の初の統一判断が注目される。
GPS捜査を巡っては警察庁が2006年、他の手段で容疑者らの追跡が困難な場合などは令状を取らずにGPS端末を取り付けられると全国の警察に通達した。そうした捜査自体を秘密にすることも指示しているため、具体的な運用状況は明らかになっていない。
大法廷で審理されたのは、店舗荒らしや車両盗を繰り返したとして窃盗罪などに問われた大阪府の男の事件。大阪高裁判決などによると、警察は13年5〜12月に計16個のGPS端末を被告や共犯者らの車に取り付けた。中には1200回以上にわたり位置情報の検索に使われた端末もあった。
先月下旬の上告審弁論で、弁護側は重大なプライバシー侵害を指摘した上で「知らずに監視される捜査は受け入れられない。どんなルールなら許されるか国民が決めるべきだ」とGPS捜査に関する立法措置の必要性を主張。検察側は「GPS捜査は尾行や張り込みによるプライバシー侵害を超えるものではなく、令状が必要な強制捜査には当たらない」と反論した。
ほぼ正確な位置情報を得られるGPSは、確かに捜査に有効だろう。しかし、日弁連は「尾行や張り込みは原則として私的スペースに立ち入ることができないのに、GPS捜査では私的スペースの位置情報も取得できる」などとして強制捜査に当たると指摘。令状なしの捜査は基本的人権を侵害しているとして即時中止を求めている。
GPS端末を使った捜査の違法性については各地の裁判所で争われているが、判断は揺れているのが現状だ。
大法廷で審理された事件で一審大阪地裁判決は、令状主義の軽視でGPS捜査の違法性は重大と指摘。二審大阪高裁はGPS捜査に令状が必要かどうかには言及せず、「捜査に重大な違法性はない」とし被告の控訴を棄却した。広島高裁は別の事件で昨年7月、GPS捜査に令状は不要との判断を示している。
そもそも警察庁がGPS捜査が許されるとする「他の手段で追跡が困難な場合」などの判断基準は曖昧で、恣意(しい)的運用につながりかねないと危惧する声は多い。プライバシーに最大限配慮した明確なルールづくりが必要ではないか。