森友学園問題 幕引きはありえない - 朝日新聞(2017年3月13日)

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これで幕引きにするわけにはいかない。全容解明には関係者の国会招致がやはり必要だ。
学校法人「森友学園」(大阪市)の籠池(かごいけ)泰典理事長が、4月開校をめざしていた小学校の設置認可の申請を取り下げ、理事長を退任すると発表した。
大阪府はすでに不認可の方針を示していた。申請を取り下げることで、事態の収拾を図ったようにも受け取れる。
だが、10日の記者会見で籠池氏は、国有地売買の経緯や補助金の不正取得疑惑について詳細な説明をしなかった。逆に府に対し「私どもの資料を流出させた」と批判、国会での追及や報道のせいで工事が遅れ、寄付金集めに影響が出たなどと、まるで被害者のように語った。
いま学園に向けられている疑惑は多岐にわたる。反省や、真摯(しんし)に説明する姿勢が見られなかったのは残念だ。
申請を取り下げ、仮に国が土地を買い戻したとしても、土地売却の不可解な減額の経緯や、政治家の関与の有無などを解明する必要性に変わりはない。記者会見で持論を述べるだけでなく、籠池氏は国会で疑問にていねいに答えるべきだ。
野党は籠池氏や当時の財務省幹部らの国会招致を求めている。だが自公両党は応じない。
「民間人だから慎重であるべきだ」「違法性がない」「国会で審議中」。それが与党側の言い分だ。
しかし、過去に民間人が国会に参考人として招致された例は98年の日興証券利益供与事件や02年の外務省NGO問題、15年の年金情報不正アクセスなど、少なからずある。
何より森友学園は小学校の建築事業費をめぐり、金額の異なる3通りの契約書を国や府などに提出、補助金を不正に得ていた疑惑まで浮上している。
何をもって違法性がないと言い切れるのか。
参院での審議では、財務、国土交通両省とも「記録がない」「法的に適正に処理した」と繰り返し、現在の担当局長らが、棒読みのような「官僚答弁」に終始している。
こうした政府の態度に、らちが明かないと多くの国民が感じているのが現状ではないか。
安倍首相の妻昭恵氏の名誉校長就任の経緯やその影響についても、籠池氏や財務省幹部にただす必要がある。首相らが国有地払い下げなどに「不正はない」というなら、堂々と招致に応じて真相を解明すればいい。
このままでは「疑惑にふたをして、逃げている」と言われても仕方あるまい。