<柳沢協二さんのウオッチ安保法制>治安理由 否定に矛盾 撤収判断なら月内帰還を - 東京新聞(2017年3月11日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017031102000129.html
http://megalodon.jp/2017-0311-1208-24/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201703/CK2017031102000129.html

隊員に犠牲が出ないうちに撤収を決めたのは良かったが、なぜここまで決められなかったのかが問題だ。政府は治安の悪化を理由とした撤収を否定するが、説明には矛盾がある。
国連は昨年七月に発生した大規模な衝突をきっかけに、PKO部隊の増派を決めた。これは治安が悪いことの証明だ。治安がいいのなら、まだいくらでもやるべき仕事はある。政府が強調する工事実績も、部隊が工事を再開した昨年秋から、ほとんど増えていないのではないか。同じ理由で撤収するなら、昨年のうちにできたはずだ。
撤収を決めた部隊の状況は、実は非常に不安定だ。一般論として言えば隊員の士気は下がり、相手に攻撃する気があれば、非常に危険な状態となる。残務処理に二カ月以上かけるのは部隊の安全にとってリスキーだ。撤収を判断したなら五月末と言わず、三月末に帰ってくるべきだ。
昨年七月の衝突発生当時の現地部隊の日報から判断すれば、薄氷を踏む思いで活動していたはずだ。任務が全てうまくいったかのような政府の説明を聞くと、今回のPKO活動による教訓が今後に十分生かされるのか、不安を覚える。 (聞き手・新開浩)