社説 森友学園 検査院任せは筋違いだ - 毎日新聞(2017年3月5日)

http://mainichi.jp/articles/20170305/ddm/005/070/003000c
http://archive.is/2017.03.05-220955/http://mainichi.jp/articles/20170305/ddm/005/070/003000c

国有地取得を巡る交渉が、大阪の学校法人「森友学園」の要求通りに進んだのはなぜか。
政治家が関与した疑いがある以上、政府・与党は会計検査院任せにはせず、国政調査権に基づく真相の解明を進めるべきである。
学園の籠池(かごいけ)泰典理事長が自民党鴻池祥肇参院議員の事務所に、小学校開校を巡り役所への口利きを依頼していた記録が発覚した。依頼は、2013年8月から昨年3月にかけて15回に上る。
「政治力で早く結論が得られるように」「賃借料をまけてもらえるようお願いしたい」などと露骨な要求が記されている。そこから浮かび上がるのは、政治家を通じて執拗(しつよう)に利益を得ようとする学園側の姿勢だ。
実際に、財務省近畿財務局や国土交通省大阪航空局との交渉は理事長の意向に沿う形で進んだ。
記録によると、財務局は当初、国有地購入による取得しか認めなかったが、理事長が「8年間は借地で、その後購入とできないか」と事務所に要望した結果、売却を前提とした10年間の定期借地契約になった。
年間約4000万円の賃料提示にも理事長は「高すぎる。何とか働きかけしてほしい」と事務所に求め、年間2730万円に減額された。
さらに売買契約に切り替えた際も一括払いでなく分割払いとなる。
理事長の要望に応じて財務局や航空局がルールを次々と変更した経過が見て取れる。財務省は「政治家から不当な働きかけはない」と答弁しているが、判明した事実とは大きく食い違う。
学園の小学校設立の認可を巡る審議にも不可解な経緯があった。大阪府の審議会は財務面に不安があることなどから認可を保留したが、1カ月後の臨時会では一転して、条件付きながら認可適当と答申した。理事長はこの間、大阪府議に「小学校の件、よろしくお願いします」と要請していた。
もはや理事長らの参考人招致が不可欠だろう。ところが、政府や自民党会計検査院を盾に野党の要求を拒んでいる。
検査院の検査は、売却価格が適正だったかどうかという外形的なチェックにとどまる。交渉過程で不正がなかったかどうかを解明することまでは期待できない。
安倍晋三首相の昭恵夫人は小学校の名誉校長に就任し、問題発覚後に辞退した。学園の寄付集めには首相の名が一時使われており、首相は全くの第三者ではない。
首相がもし「利用された」と考えるのであれば、理事長らの国会招致で事実の解明を図ることが自らの利益にもなるのではないか。