福島原発事故 除染マネー食い物 職員接待「よくある」 - 毎日新聞(2017年3月2日)

http://mainichi.jp/articles/20170302/k00/00e/040/286000c
http://archive.is/2017.03.02-080017/http://mainichi.jp/articles/20170302/k00/00e/040/286000c

福島第1原発事故から間もなく6年となる2日、除染事業に絡む贈収賄事件が発覚した。警視庁捜査2課や福島県警の調べでは、収賄容疑で逮捕された環境省の「福島環境再生事務所」の専門官、鈴木雄二容疑者(56)は贈賄側の業者から繰り返し接待を受けていた疑いがあるという。同庁などは除染マネーに群がった業者と同省職員の癒着の解明を目指す。
除染は日常生活で人が受ける放射線量を減らすため、放射性物質がついている土や草を取り除いたり、建物を水で洗い流したりする作業。2011年に成立した「放射性物質汚染対処特別措置法」に基づき、原発周辺にある福島県の11市町村は国が直轄で、それ以外の地域は各自治体が実施している。15年度末までに除染に投入された費用は1兆8392億円。
11市町村の除染は、環境省出先機関である「福島環境再生事務所」が入札で業者に委託している。除染によって放射線量が下がったかの確認など現場での作業は、県内に5カ所ある同事務所の支所が担当している。
今回不正があったとみられているのは、県東部の浪江町の除染事業だ。同事務所が13年度から4回にわたって一般競争入札を実施し、大手ゼネコンなどで構成する同じ共同企業体(JV)がいずれも落札している。4件の契約金額の合計は約766億円に上る。
地元業者などによると、JVが事業を請け負っても、現場で作業をするのは中小の土木業者などだという。元請けに幾重にも下請けが連なる構造で、贈賄容疑で逮捕された小杉幹雄容疑者(63)の会社もこの中に入り込んでいた。
「一部の業者が職員を接待していることは、業界ではよく知られている」と地元業者は明かす。「接待をするような業者は地元住民の生活を考えていない。福島の事業を食い物にしている」と憤る。鈴木容疑者は小杉容疑者から飲食や旅行などの接待を繰り返し受けて便宜を図ったとみられており、警視庁などが不正の全容解明を進める。
環境省によると、浪江町の除染対象区域は約3300ヘクタール。今年1月末現在の進捗(しんちょく)状況は、宅地95%▽農地95%▽森林99.8%▽道路91%−−となっている。【宮崎隆、黒川晋史】