福島の記憶継ぐ「政治家の家」 建築から5年、アート建て替え:首都圏 - 東京新聞(2017年2月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/metropolitan/list/201702/CK2017022602000183.html
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◆横浜の芸術家、28日から恵比寿で作品展
東京電力福島第一原発事故から一年後、原発から二十キロ圏のすぐ外に「政治家の家」という小屋型の立体アートを制作した芸術家の開発好明(よしあき)さん(50)=横浜市中区=が、事故から六年たつのを前に政治家の家を建て替えた。制作から五年経過した小屋は朽ち、ベニヤ板ははがれ始めていた。事故の記憶を風化させないため、建て替えを決めた。 (志村彰太)
政治家の家は幅一・八メートル、奥行き二・七メートル、高さ二メートル。福島県南相馬市小高区の私有地に、二〇一二年三月に建てた。建築前は「地元の人たちの気持ちを逆なでしないか」と悩んだ。しかし、地主をはじめ地域住民は「ぜひやってくれ」と後押ししてくれた。
作品自体に脱原発の意味を込めたわけではない。「現地を見てから決める政治であってほしい」と、福島に来ないまま復興や原子力政策を語る政治家を皮肉っている。「ぜひ来てください」と全国会議員に招待状も送ったが、開発さんの知る限り政治家の家に来た国会議員はいなかった。
当初は短期間で撤去する予定だったため、木材に防腐処理をしなかった。開発さんは「事故後、原発周辺の家屋は空き家になって荒れている。政治家の家も時の流れを感じさせるために、そのままにすることも考えた」と話す。
昨年になって「壊れかけてきて寂しい」と言われた。壊すか、続けるか−。「まだ原発事故は続いている」。今度は防腐処理した材料を使い、昨年末に同じ寸法で建て直した。前回は「象徴」としての役割だったが、今後は政治家の家で芸術家の作品展を開くなどの拠点として使うという。
二十八日〜三月二十六日、東京都渋谷区恵比寿のアートショップ「ナディッフアパート」で、取り壊した古い政治家の家の木材や写真を展示・販売する(月曜定休)。三月十一日午後二〜四時は同店で、開発さんと福島県立博物館学芸員の川延安直(かわのべやすなお)さんとの対談がある。入場料千円。