理の眼 差別者に教育の資格なし=青木理 - 毎日新聞(2017年2月21日)

http://mainichi.jp/articles/20170221/ddf/012/070/002000c
http://archive.is/2017.02.21-132544/http://mainichi.jp/articles/20170221/ddf/012/070/002000c

大阪市の学校法人・森友学園をめぐるいくつかの問題、本紙など一部メディアは追及していますが、もっと大きく報じられるべき社会的な病が横たわっていると僕は感じます。本紙読者は既にご存じの方も多いでしょうから、おさらいはごく簡単に。まず、大阪府豊中市内の国有地が小学校用地として同学園に“格安”で売却されたのではないか、という疑惑です。
これまでの本紙記事などによると、当該の土地は9億円超の価値があると査定されましたが、地下にゴミなどの埋設物があったため、撤去費用などとして約8億円も割り引いて売却されました。
しかも今春に開校予定の同小学校は、安倍晋三首相の妻昭恵さんが「名誉校長」に就き、一時は「安倍晋三記念小学校」という校名が検討されていたとか。安倍首相は国会で「私や妻が(売却に)関係したということになれば、首相も国会議員も辞める」と関与を強く否定しましたが、同学園のトップが熱烈な安倍政権支持者なのは間違いないでしょう。
そしてもう一つ、学園が運営する大阪市淀川区の幼稚園をめぐる問題も発覚しました。園が保護者向けに「よこしまな考え方を持った在日韓国人支那人」「日本人の顔をしてわが国に存在することが問題」などと記した文書を配布していた、というのです。
露骨な差別、偏見、明らかなヘイト文書です。この幼稚園、戦前の「教育勅語」を園児に暗唱させることなどで知られていましたが、歴史修正主義的な復古教育に他民族への差別、偏見がセットになったなら、そのような学校法人に教育を担う資格があるのか。
国有地売却に首相や政権が関わったのかは現時点で不明です。ただ、学園のトップが政権を熱心に支持し、首相側も一定の“協力”をしていたのは事実。本来なら、疑惑への関与を否定するにとどまらず、学園の振る舞いが容認できないというメッセージを発することこそ為政者の役割でしょう。
なのに首相は国会で「学園の教育への熱意は素晴らしいと聞いている」とも述べました。これでは差別やヘイト行為にお墨付きを与えかねない。国有地疑惑も重大ですが、こちらも相当に深刻だと僕は思います。(ジャーナリスト)