<自民党>「教育国債」検討、無償化へ財源 衆院選見据え - 毎日新聞(2017年2月15日)

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自民党は15日、大学など高等教育の授業料を無償化するための財源として、使途を教育に限定した「教育国債」を発行する検討を始めた。「人への投資」を次期衆院選の目玉に位置付け、旧民主党政権で教育無償化に取り組んだ民進党に対抗する狙いがある。ただ、財務省は強く抵抗しており、実現するかは不透明だ。【加藤明子、小倉祥徳】
「教育財源の確保は、理念や具体的な教育国債、税の議論になっていく。政治主導で取り組んでいく」
自民党の恒久的な教育財源確保に関する特命チームが15日、初の役員会合を開き、主査の馳浩文部科学相が語った。春に中間報告をまとめ、政府が6月にも決定する経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に盛り込むことを目指す。
安倍晋三首相は1月の衆院本会議で、高等教育の無償化について「経済的理由によって進学を断念せざるを得ないことはあってはならない。必要な財源を確保しつつ、しっかりと取り組む」と答弁。党関係者は「首相は教育国債に関心がある」と指摘する。
安倍政権は旧民主党政権が導入した高校無償化を所得制限を付けて継続した。一方、高等教育への支援は、返済の必要がない給付型奨学金を2017年度から先行実施するが、1学年約2万人を対象に原則として月額2万〜4万円と限定的だ。国公私立大学の授業料が上昇を続けるなか、卒業後の奨学金の返済難など「若者の貧困」には十分応えきれていないのが実情だ。
全体として無償化を実現するには5兆円の財源が必要とされる。格差問題を争点化したい民進党は、衆院選公約で「人への投資」を柱に据える方針。無償化に向けた財源確保には教育国債と似た「子ども国債」の発行を検討しており、自民幹部は教育国債について「民進党にらみの選挙対策だ」と語る。
ただ、教育国債も財源の裏付けのない借金であることに変わりはなく、返済義務は将来世代が担う。麻生太郎財務相は「親の世代が子どもに借金を回すものだ」と強くけん制し、財務省幹部も「教育予算を大幅に増やすなら、公共事業や防衛費を削る覚悟が必要だ」と語った。
維新取り込み改憲
自民党が教育国債の議論を急ぐ背景には、憲法改正で「教育無償化」の実現を訴える日本維新の会を取り込み、改憲論議を活性化させる狙いもある。これに対し、民進党は教育予算と憲法改正を連動させる動きに警戒感を強めている。
憲法の話が出てくる可能性はある。どんな議論にも制約をつけない」。馳浩文部科学相は15日、記者団にこう語り、教育国債憲法論議がリンクするとの考えを示した。
自民党憲法改正に積極的な安倍晋三首相の意向を踏まえ、衆参両院の憲法審査会で改憲項目の絞り込みを急ぐ考えだが、民進党は慎重姿勢を崩していない。打開策として自民党内で浮上したのが、維新が憲法改正原案に盛り込んだ教育無償化で、自民幹部は「民進党も反対しづらいはずだ」と語る。
首相は1月の施政方針演説で「憲法が普通教育の無償化を定めた。高等教育も全ての国民に真に開かれなければならない」と語った。改憲を主張する維新に日ごろから「敬意を表したい」と秋波を送っており、教育無償化が維新との協力の鍵になりつつある。
こうした首相の姿勢が教育国債の議論の追い風となっており、自民幹部は「教育国債で財源の見通しがつけば改憲の弾みにもなる」と指摘。維新幹部も「憲法改正による無償化に近づいている」と期待感を示す。
一方、民進党憲法を改正しなくても法律で無償化することは可能としており、「改憲という領域にわざわざ持っていかなくても、目の前の法律を議論すればいい」(大串博志政調会長)と自民党をけん制。自民党内にも「教育が政治的な焦点になっている」(若手議員)として、性急な議論に距離を置く声も出ている。