沖縄の山城議長勾留 元高裁判事も疑問 「基地反対への弾圧」 - 東京新聞(2017年2月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017021102000137.html
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沖縄県で米軍基地建設に反対する抗議行動に絡んで逮捕、起訴された沖縄平和運動センターの山城博治(ひろじ)議長(64)の勾留が四カ月近くになった。保釈が認められやすくなる中、「人質司法」と批判する声も上がる。勾留を決めるのは警察でも検察でもなく、裁判所。元東京高裁裁判長の木谷(きたに)明弁護士(79)は本紙の取材に「ここまで身柄を拘束する事案とは思えない。基地反対運動に対する弾圧と言われても仕方ない」などと元判事の視点から疑問を呈した。 (清水祐樹)
「裁判官は、検察官の主張に乗せられてしまいがちだ」。木谷さんは古巣についてこう嘆く。検察は勾留が必要な理由を書いた書類や資料を裁判所に提出し、裁判所が判断する。自身は東京高裁裁判長だった二〇〇〇年、東京電力女性社員殺害事件で、東京地裁で無罪判決を受けたネパール人男性について、控訴した検察側の勾留要請を退けた経験を持つ。後に別の裁判長が勾留を認めたが、男性は一二年に無罪が確定した。
山城議長は一六年十〜十一月、沖縄防衛局職員の腕をつかんでけがを負わせたとする傷害などの容疑で三回逮捕され、他の二人とともに勾留が続く。那覇地裁は「証拠隠滅の恐れがある」として保釈を認めず、弁護士以外との面会を制限している。木谷さんは「厳しすぎる。精神的な支援を遮断して自白を迫る『人質司法』の手法だ」と指摘する。
逮捕当初の勾留については「抗議行動の仲間に虚偽の証言をさせる可能性などから必要はあったかもしれない」とする一方、百日を超える勾留には「説得力がない」と言い切る。事件の現場には、いずれも周りに大勢の人がいた。「目撃者が多く、客観的な証拠は集まったはずだ。今更、口裏合わせもできないだろう」
最近では、保釈を認めたり、検察側の勾留請求を却下したりする割合が高まっている。最高裁によると、保釈率は〇六年の13・9%から一五年は25・7%へ、勾留請求却下率は〇六年の0・7%から一五年には3・36%へ大幅に上がった。
木谷さんは言う。「重大事件でもないのに、いつまでも勾留しておくような判断は残念だ」

<勾留> 逮捕された容疑者や起訴された被告の身柄を警察署や拘置所などの施設に収容し、拘束する処分。刑事訴訟法で規定している。罪を犯したことが疑われ、証拠隠滅や逃亡の恐れがあるなどの理由が必要で、裁判所が決定する。逮捕後の期間は10日で例外的な罪を除き、さらに最大10日延長できる。起訴後の期間は2カ月で、必要性が認められる場合は1カ月ずつ更新できる。被告や弁護人らは保証金の納付を条件に拘束を解く「保釈」を請求でき、裁判所は証拠隠滅の恐れなどがない場合は認めなければならない。

<きたに・あきら> 1937年、神奈川県生まれ。東京大法学部卒。東京、名古屋両地裁判事、最高裁調査官、水戸地裁所長などを歴任。2000年に東京高裁判事部総括で退官後、公証人を経て04年から法政大法科大学院教授。12年に退職、弁護士登録。刑事裁判で数々の無罪判決を出したことで知られる。