検索結果削除に厳格条件 最高裁が初の判断基準 - 東京新聞(2017年2月2日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020202000136.html
http://megalodon.jp/2017-0202-1008-31/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017020202000136.html

インターネットの検索サイト「グーグル」に対し、自分の逮捕歴に関する記事を検索結果の表示から削除するよう男性が求めた裁判で、最高裁は削除できる場合の判断基準として、表現の自由より、プライバシーの保護が「明らかに優越する場合」に限るという厳格な条件を初めて示した。しかし実際にどのような事案なら削除できるかは明確に示されず、今後の事例の積み重ねを待つ必要がある。
男性の代理人の神田知宏弁護士は一日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見し、「何年たてば削除してもらえるのかの目安が示されなかったのは残念だ」と語った。削除が認められないことで「職場や近所付き合いでの不安を抱え続けることになる」と男性の受ける不利益を説明した。
最高裁は、考慮すべき基準を、事実の性質や内容▽事実が伝達される範囲と具体的被害の程度▽記事の目的や意義−などと判示。削除ができるのは、事実を公表されないことによるプライバシー保護の利益が、検索事業者の表現の自由を「明らかに優越する場合」に限るとした。
審理対象となったのは記事そのものではなく、検索結果で表示されるタイトルや記事の抜粋。男性は氏名と住所地の県名で検索すると、二〇一一年に児童買春事件で逮捕された際の報道内容が表示される状態だった。最高裁は児童買春が社会的に強い非難の対象で今も公共の利害に関する事項だとして、削除を認めなかった。
神田弁護士は、今回のような犯罪歴について「これまで以上に削除が認められにくくなるのではないか」と懸念する一方、「プライバシー保護の利益が明らかに上回ると立証しやすい事案では、削除しやすくなるのではないか」とプラスの側面にも言及。その例として、公共性の低い情報や犯罪被害者側からの請求を挙げた。
最高裁は、ネット上に残る個人情報の削除を求める権利として議論を呼び、一四年に欧州連合(EU)司法裁判所が認めた「忘れられる権利」には触れなかった。米グーグルは「最高裁が検索結果の削除に対して慎重な姿勢を示したと考えている」とのコメントを出した。