韓国教授無罪 学問の自由は侵せない - 東京新聞(2017年1月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017012702000140.html
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旧日本軍の慰安婦に関する著作で名誉毀損(きそん)罪に問われた韓国の研究者に、韓国の地裁で無罪判決が出た。強硬な世論や運動とは一線を画し、表現、学問の自由を保障した判決だと評価したい。
ソウル東部地裁は、著書「帝国の慰安婦」で元慰安婦らの名誉を傷つけたとして起訴された朴裕河・世宗大教授に無罪(求刑懲役三年)を言い渡した。著作は日韓の和解のために書かれたとも指摘した。名誉毀損刑事罰で裁くのは、国際的に少数派になっている。
検察は同書が「慰安婦の本質は売春婦」「日本軍と同志的な関係にあった」と表現したことなどを虚偽であり、名誉毀損に当たると主張した。だが、判決は「資料を引用して分析、評価したうえでの意見の表明」「特定の慰安婦の名誉を傷つけたとみるのは難しい」と判断した。
判決はさらに、学問の表現は正誤を別にして保護すべきであり、反論があれば学問の場や社会での議論で対応するものだと述べた。
歴史研究では資料選択と見解の多様さを尊重すべきであり、判決がはっきり支持したといえよう。感情や道徳的な視点から一歩距離を置いて、史実を正確に捉えようとする努力が日韓双方に必要だ。
朴教授は韓国語版とは内容、構成が異なる同じ書名の日本語版も著した。日本では複数の賞を受賞し、慰安婦問題の再考を促すきっかけをつくった。
著作では、元慰安婦の証言に加えて、日本軍関係者の証言録や戦争文学などの資料も読み込んでいる。慰安婦とは日本がまず自国の女性に強要して海外に送り込み、次に植民地の女性がその代替にされたと指摘する。兵士として動員された日本人男性と共に、帝国主義下で最も過酷な経験を強いられたと記述する。
韓国の市民団体が主張する、少女が連れ去られて慰安婦にされたという一律な見方には否定的だ。慰安婦問題を象徴する少女像についても、「抵抗と闘争のイメージだけを表現する少女像では、日本に協力しなければならなかった朝鮮人慰安婦の本当の悲しみは表現できない」と記した。日韓両国民が心に留めるべき考え方ではないだろうか。
今回の判決で日韓関係のさらなる悪化はひとまず回避できた。だが、ソウルの日本大使館と釜山総領事館前に設置された少女像の撤去にはめどが付かず、対立の火種は残ったままだ。