共謀罪の審議優先 「成人18歳」の民法改正案は見送り - 東京新聞(2017年1月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201701/CK2017012702000122.html
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政府は、共謀罪の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案の審議を優先させようと、成人年齢を現行の二十歳から十八歳に引き下げる民法改正案の今の通常国会への提出を見送る方針を固めた。「大人」の定義を変更する民法成人年齢引き下げは、国民生活への影響が大きい重要法案。法務省は今の国会への提出を予定していたが、政府・与党は共謀罪法案の今国会成立に意欲を示しており、同じ衆院法務委員会で審議される民法改正案は次の臨時国会への提出を目指す。
安倍晋三首相は組織犯罪処罰法の改正について、二十六日の衆院予算委員会で「新しい法律を整備しないと条約を締結できない」と述べ、国連の国際組織犯罪防止条約を締結するために必要だと強調した。
今国会の会期は六月十八日まで。六月から七月にかけては東京都議選が予定されているため、大幅な会期延長は難しいとみられている。民法成人年齢が引き下げられると、十八歳、十九歳でも親の同意なしで契約を結べるようになるため消費者被害の拡大が懸念される。さまざまな意見があることなどから、政府は相当の審議時間が必要だと考えており、組織犯罪処罰法改正案の後に審議する時間はないとみている。
民法成人年齢を巡っては、法制審議会(法相の諮問機関)が二〇〇九年十月に「十八歳に引き下げるのが適当」と答申。自民党の特命委員会も一五年九月、できる限り速やかに引き下げるべきだと提言した。

◆1人の行為で全員検挙 民進共謀罪のまま」
政府が「共謀罪」と同じ趣旨で創設を目指す「テロ等準備罪」を巡り、二十六日の衆院予算委員会では、ハイジャックテロを具体例に共謀罪の本質を問う議論が交わされた。安倍晋三首相は、テロを計画した十人のうち一人が航空券を予約すれば、残り九人もテロ等準備罪で「一網打尽にできる」と強調。民進党山尾志桜里氏は、一人の行為で計画のみにかかわった残り九人全員が適用対象になり「本質は変わらず、共謀罪のままだ」と指摘した。
テロ等準備罪は、航空券を予約するという「準備行為」が処罰の条件に追加されている。首相は「テロ組織にはそれぞれ役割がある。予約する人もいれば、資金を調達する人もいる。予約したら『準備』とみなし、ほかの人を含め、一網打尽にできる。テロを未然に防げる」と力説した。
現行の法律でも武器の調達などの準備行為があれば予備罪として処罰できるが、首相は「実際に武器を持って現場に行こうとする段階でなければ捕まえられない場合がある。そこにちゃんとふたを閉めるのが、今回のテロ等準備罪だ」と必要性を説いた。
山尾氏は「ほかの九人は準備行為をしなくても検挙の対象になる。検挙されるのはテロを共謀したから。『準備罪』という新しい衣装を着け、『テロ等』という新しい帽子をかぶせても、生身の体は共謀罪のままだ」と批判した。
テロ等準備罪では犯罪の主体をテロなどを計画する「組織的犯罪集団」に限定したことを理由に、首相は「(共謀罪と)全く違う」と強調するのに対し、山尾氏は「過去の共謀罪でも、組織的犯罪集団だけが対象で、一般の方々は対象になることはあり得ないと、法務省も閣僚も繰り返し言っている」と反論した。 (木谷孝洋)