大学再就職 5年で49人 文科省天下り問題 - 東京新聞(2017年1月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201701/CK2017012102000137.html
http://megalodon.jp/2017-0121-0919-27/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201701/CK2017012102000137.html


政府の第三者機関、再就職等監視委員会は二十日、文部科学省が高等教育局の吉田大輔前局長(61)の天下りを組織的にあっせんしたことなどを国家公務員法違反と認定した。前川喜平事務次官引責辞任し、次官や当時の人事課長ら七人は懲戒処分。吉田前局長も再就職先の早稲田大を辞職した。文科省を揺るがす事態に、天下りを受け入れた早大の鎌田薫総長はこの日の会見で癒着は強く否定。しかし、受け入れの理由として文科省からの補助金を挙げる大学関係者は多い。鎌田総長は会見で二〇〇八年の改正国家公務員法施行後、文科省出身者を専任の教授として採用したのは初めてだといい、「文科省に不適切な利益・便宜供与を求めたことも、受けたこともない」と強調した。
本紙の調べでは早大は一五年までの五年間に省庁出身者が十人再就職しており、他校に比べて多い。早大側は「そのことで大学の独立が脅かされたことはない」とした。
早大に限らず、文科省から大学への再就職は常態化している。退職後二カ月たたずに私立大を運営する学校法人に再就職した同省OBは、一五年度までの五年間で四十二人いた。国立大への再就職は同年度までの五年間で七人。名古屋大に二人、東京大、大阪大、千葉大などに一人ずつ再就職している。

少子化で私大の経営は厳しさを増しているが、補助金はこの十年ほど四千三百億円前後でほぼ横ばいの状態。〇四年度に一兆二千四百億円だった国立大への運営費交付金は十年で約一割減少した。加えて一〇年度以降は文科省が大学を評価し、運営費を評価の高い大学に重点配分するようになった。
文科省から天下りを受け入れる理由について、都内の私大の理事は「今の私立大は行政の援助なしに経営が成り立たない。その上、私学への補助金は大学や研究によって重点配分する傾向がでてきている。そのときに文科省のOBがいるかどうかでは大きく違う」と指摘。中部地区の国立大関係者は「各大学は補助金を減らされたり、新学部設置の際などに、文科省の嫌がらせを受けないよう、天下り職員を使い、政府や文科省の意向を探っている」と話す。
◆OB駆使した「脱法」横行
文部科学省天下りを巡って再就職等監視委員会は、人事課OBを使った再就職あっせんの仕組みをあぶり出した。この仕組みを使うなどした再就職は三十八件あったが、国家公務員法天下り禁止規定に違反すると認定したのは十件。ほか二十八件と何が違ったのか。
文科省は大学などから寄せられる求人情報や退職者情報などをOBのもとに集約。あっせん行為が禁じられていないOBが、誰がどこに再就職するのかを割り振ったうえで求人側に伝え、人事課があっせんに関わっていない体裁を整えていた。
違法認定された事案の中には、誰がどこに再就職するか前川喜平前次官(当時審議官)が調整をした上で、結果の伝達のみをOBに任せたものがあり、「頭は前川前次官で、OBは口になって伝えただけ」(文科省幹部)と判断された。また、OBが再就職案を人事課に伝え、人事課が再就職先にその案を伝えたケースもあった。
経済産業省官僚の古賀茂明さんは文科省の仕組みについて「特別なわけではない」と他省庁でもある可能性を示唆。その上で「天下りの数は多く、ポスト調整などをOBだけで管理するのは大変で、事務的なお膳立ては人事当局がやらなくては無理だ」と話す。