http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017011902000125.html
http://megalodon.jp/2017-0119-1056-58/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017011902000125.html
<旅のつばくろ 淋しかないか おれもさみしい サーカス暮らし>−。「サーカスの唄」(作詞・西条八十、作曲・古賀政男)は一九三三(昭和八)年にヒットした。
ドイツのサーカス団の来日に合わせ作られたという割に、その内容は旅から旅の暮らしのわびしさや切なさの色が濃い。サーカスと聞けば、夢と幻想の世界を想像する一方、あの歌のような哀愁の音もまじるもので、それがサーカスの人間くさい独特な味かもしれぬ。
これも時代か。約百五十年の歴史を誇る米サーカス団「リングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー」が五月に廃業するそうである。
この一座を描いた米映画「地上最大のショウ」を思い出す人もいるか。戦争中もルーズベルト大統領が列車の使用を特別に許可したほどの名門である。
象と縁が深い。前身の一座が一八八二年象を導入し、人気となるも鉄道事故で死ぬ。花形を失ったが、あの象は若い象を救おうとして犠牲になったと宣伝し、さらに人気になったというから、なかなかしたたかである。
今度ばかりは知恵がなかったらしい。廃業の背景は動物愛護団体の批判を受け、象のショーをやめたとたん、客が減ったことと聞くが、娯楽あふれる時代にあってもはやサーカスに「地上最大」の座を守る力はないのか。郷愁のサーカスの衰退に<おれもさみしい>である。