<少年院>PC初歩教えます 出院後へ支援 NPOと連携 - 毎日新聞(2017年1月18日)

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少年院でパソコン(PC)の使い方を初歩から教える矯正教育の取り組みが始まっている。出院後の就労などに向けて導入されたが、ほとんど触れたことがないという少年も多く、仕事に役立つ段階まで習熟できるかという課題もある。茨城県内の少年院では、昨年10月にニートの就労支援に携わってきたNPO法人と連携し、実践的なパソコン講座のカリキュラムを取り入れている。【岡礼子】
「WO(を)」「RE(れ)」−−。茨城県牛久市の茨城農芸学院の教室で、出院が近づいた16〜20歳の少年10人がパソコンに向かう。ローマ字とひらがなの対応表を横に置き、NPO法人「育て上げネット」(東京都立川市)の講師に隣で読み上げてもらって、キーボードを打つ。
2015年の少年院法改正で職業指導の内容が見直され、少年院の全員が受講するパソコン基礎講座の実施が決まった。法務省の協力雇用主らに調査した結果、基本的な読み書き計算や、あいさつができることと並んで、「最低限のパソコン技能が必要」という声が多かったためだ。講座は各地の少年院で昨年春ごろから順次始まっている。
少年側の要望も時代とともに変わってきている。同学院の小山定明院長は「以前は手に職をつけたいという少年が多かったが、今はスーツを着る仕事がしたいという子が増えている」と話す。
パソコン講座は電源の入れ方に始まり、簡単な文書作成や表計算までを計約24時間かけて学ぶ。だが、パソコンの知識には個人差が大きく、講義形式の一斉指導は難しい。また、実際に働く時に役立つ使い方を教える必要があり、使い始めにつまずいても投げ出さずに習得できるよう、きめ細かい指導が求められる。
このため同学院では、通常は法務教官が行う指導を、パソコン指導により若者の就労を支援してきた実績がある育て上げネットに依頼した。院内での指導を近隣の学校の教員に頼むことはあるが、若者支援のNPOの協力を得るのはめずらしいという。
育て上げネットは、(1)「っ(促音)」や「きゃ(拗音(ようおん))」などを含む単語の入力(2)10分間に200文字程度の入力(3)表計算の基礎−−を身につけることを目標に指導し、つまずいたら個別に教える。学習記録簿もつけ、達成感が感じられるように工夫している。
小山院長は「少年たちは社会経験が浅いので、いろいろな人とふれあう体験も大切で、こうした支援はありがたい。外部の講師は教え方が上手で、いつもよりおだやかな顔で取り組む子もいる」と効果を期待する。