育休延長法案 育メンにつながらない - 毎日新聞(2017年1月18日)

http://mainichi.jp/articles/20170118/ddm/005/070/046000c
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現在最長1年半となっている育児休業(育休)の期間を2年に延長する育児・介護休業法の改正案が通常国会に提出される予定だ。育休を終えても保育所が見つからない女性の離職を防ぐためという。
男性の育休取得を促してはいるものの企業の努力義務にとどまっている。これだけでは女性に育児負担がのしかかる現状は変わらない。安倍政権が掲げる「女性が活躍できる社会」にも逆行する。男性に育休を割り当てる「パパ・クオータ制」の導入など、抜本的な改革が必要だ。
2015年度の男性の育休取得率は2・65%で過去最高となったが、女性の81・5%とは比べるべくもない。男性の8〜9割が育休を取っている北欧諸国とも雲泥の差だ。しかも、日本の男性の育休は「5日未満」が56・9%。これでは有給休暇と何が違うのかわからない。
今回の育児・介護休業法の改正は現状を変える好機である。ところが昨年末に開かれた労働政策審議会分科会では、待機児童の解消を念頭に議論することを厚生労働省が提案し、短期間で意見をとりまとめた。
親が育休中は待機児童に算入されないため、保育所不足を育休の延長で埋め合わせようという意図は明らかだ。長時間労働に厳しい目が向けられる企業には、人手不足をさらに招かないため、男性の育休取得を努力義務にとどめたい思惑もあるのだろう。しかし、女性が育休を延長して2年取ることになると職場復帰はますます難しくなり、結果的に離職は増えるだろう。
いずれにせよ、待機児童ゼロありきの議論は「育児は女性の役割」という固定観念をさらに強化することにつながる恐れがある。これでは女性の活躍も少子高齢化の解消もできない。やはり「パパ・クオータ制」のような抜本策が必要だ。
北欧諸国も以前は男性の育休がほとんどゼロだったが、パパ・クオータ制の導入で劇的に状況を変えた。
育休の割当制度は、決して男性に育休を強制するものではない。
現在のノルウェーの制度では育休を最長54週間取得できるが、うち6週間は父親のみ取ることができる。父親が休まなければ権利は消滅する。育休中の手当は54週の場合は出産前の給料の80%だが、44週までは100%支給される。
以前は日本と同水準だったドイツは07年に類似の制度を導入し、現在は男性の3人に1人が育休を取得するようになった。
安倍政権は20年までに育休を取る男性(育メン)の割合を13%にすることを目標に掲げている。諸外国に比べ低すぎる目標だが、この改正案ではそれすら達成できないだろう。