いま読む日本国憲法(36)第54条 解散後の手続き規定 - 東京新聞(2017年1月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2017011002000178.html
http://megalodon.jp/2017-0110-1015-03/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2017011002000178.html


衆院解散・総選挙や特別国会、参院の緊急集会などについて定めた、論点の多い条文です。
一項は、衆院解散に伴い、国民の代表である衆院議員が不在となる期間を区切り、四十日以内に新たに選ぶと規定。選挙で示された新たな民意に基づいて首相を指名する特別国会の召集も定めています。
よく議論になるのは二項の緊急集会。衆院解散後に緊急事態が起きた場合の「代役」が、どこまで重要な議題を扱えるのかという問題で、政府は「法律や予算は審議できるが、憲法改正までは予想していない」と国会答弁しています。
また、衆参同日選が行われる場合、緊急集会を開こうにも参院議員の半数が入れ替わることから「同日選は違憲」という主張もあります。政府は「参院議員が半数残っていれば緊急集会は可能」との立場です。
ちなみに現憲法で「緊急」事態への対応に触れているのは五四条だけ。自民党改憲草案は緊急事態条項の新設を盛り込んでいますが、賛否両論があります。
衆院解散を巡っては、多くの歴代首相は「内閣の助言と承認」に基づく天皇の国事行為として解散を定めた憲法七条を根拠としてきました。七条解散と呼ばれますが、首相に解散権を与える明文規定が現憲法にあるわけではありません。
自民党の草案は、五四条で「衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する」との規定を新設しています。草案Q&Aでは、解散を決める閣議で反対する閣僚を罷免した例があることから「閣議にかけず、内閣総理大臣が単独で解散を決定できるようにした」と解説。七条解散の明示に関しては「慣例に委ねるべきだという意見が大勢」だったと説明しています。

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憲法の主な条文についての解説を、随時掲載しています。

自民党改憲草案の関連表記
(1)衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する。
(2)衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から三十日以内に、特別国会が召集されなければならない。
(3)衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
(4)前項ただし書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失う。