原発事故対応 厳しく問い直せ - 福島民報(2016年12月31日)

http://www.minpo.jp/news/detail/2016123137744
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東日本大震災東京電力福島第一原発事故から6年目に入った平成28年は東京電力と国に対する不信が募った1年だった。炉心溶融隠[いん]蔽[ぺい]問題などを巡るお粗末な対応や、東電再建に向けた強引ともいえる議論の進め方には強い違和感を覚えた。「3・11」から東電と国は何を学んだのか。厳しく問い直さなければならない。
将来にわたる原発の事故処理と廃炉作業、それを担う東電と国などの動きは県民にとって最大の関心事の一つだ。今年の本紙「読者が選ぶ県内十大ニュース」では「東電、炉心溶融を隠蔽」が1位となり、「東電元会長ら強制起訴」「第一原発『石棺』に言及」「凍土遮水壁、凍結を開始」がベスト10に入った。全国的に「風化」が指摘されているが、県民の意識は変わっていないことの証左といえよう。
炉心溶融隠蔽問題は東電の無責任さと自浄能力を欠いた体質を改めて露呈させた。誰が隠蔽を指示したかはいまだに解明されていない。上層部が責任の所在をうやむやにしているようでは組織全体の規範意識の向上は望むべくもない。その後、福島第一、第二両原発で法令や規定に従わない事案が次々と発覚し、公表の遅れも指摘されている。
一方、経済産業省は東電再建に向けた有識者会議で、収益が見込める原発や送配電事業で他の電力会社と統合・再編を急ぐことを柱にした提言をまとめた。柏崎刈羽原発新潟県)の再稼働を前提に東電の収益を改善するとした。議論はわずか3カ月で終わり、この間、事故対応費用が従来想定を大幅に上回る約22兆円になるとの試算を出した。「再稼働しないとますます大変なことになる」といわんばかりだ。
事故の収束と廃炉に向けた作業は原因企業である東電が担う。最優先すべきは県民の安全と安心だが、法令を無視し、トラブルがあっても迅速に公表しない企業体質のままで果たして責務を全うできるのか。国にしても、高レベル放射性廃棄物の最終処分場確保や実効性のある広域避難計画の策定など再稼働を論議する前に片付けなければならない懸案が山ほどある。
集中復興期間から復興・創生期間へ移行し、東電も国も急激に「事故前」に戻りつつあるように感じる。復旧・復興は未曽有の災害の教訓を踏まえたものでなければならない。先月、本県沖を震源とするマグニチュード7・4の地震があり、沿岸部で津波を観測した。大きな被害はなかったが、東電と国は戒めと受け止めるべきだ。(早川正也)