http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016123002000117.html
http://megalodon.jp/2016-1230-0950-19/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016123002000117.html
福島の浜通りに住む詩人・みうらひろこさん(74)の詩集『渚(なぎさ)の午後』に、「遅すぎた約束」という詩がある。
約束を果たせなかった事で
心を病んだ人達を知っている…
そんな重い言葉で始まる詩だ。
あの津波が引いた後、がれきが山となった沿岸部で生存者を捜し歩いた消防団員らは、あちらこちらから助けを求める声がするのを、確かに聞いた。
だが、闇が迫り、余震がくり返し襲ってきた。「明日朝一番に助けに来るからな」「きっと、きっと助けに来るからな」と約束し、引き揚げるしかなかった。
みうらさんは、うたう。その約束を果たせなかった事を
悔んで悔んで胸を掻(か)きむしった日々に
しだいに心が蝕(むしば)んでしまったという
救助に向うはずの翌日は
(原発が)メルトダウンで爆発の危険があるからと
全町避難、まるで石持て追われるように…
この子も、あるいはあの日、助けを求め声を上げていたのだろうか。原発事故で今なお立ち入りが制限される大熊町の沿岸部で、七歳で行方不明になっていた木村汐凪(ゆうな)さんの遺骨が、見つかったという。五年九カ月を経て果たされた「遅すぎた約束」だ。
みうらさんは約束を果たせなかった事で
心を病んでしまった人達よ
あなた達は悪くない
あなた達は決して悪くないと、語り掛けている。そういう人たちの心を癒やす、時の流れであってほしい。
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