イチエフ 廃炉の現場から<読者から> ともに考え続けねば - 東京新聞(2016年12月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016122702000148.html
http://megalodon.jp/2016-1227-0937-17/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016122702000148.html

今回も貴重なご意見をお寄せいただき、心より感謝します。
それぞれ、福島第一原発の現状や廃炉の困難さ、費用の大きさをわが事と受け止めて、原発依存の未来を憂えておられるように感じます。
埼玉県熊谷市の自営業市原裕司さん(49)は「福島第一原発廃炉作業は、私にはガダルカナルの戦いの二重写しのように感じられます」と指摘します。
ガダルカナルとは、太平洋戦争の激戦地として知られる西太平洋ソロモン諸島の小島。一九四二年八月からちょうど半年間の争奪戦が、攻守の転換点になったといわれています。
日本軍は、まずガダルカナル島の戦いを局地戦だと見誤った。総合的見地に立った戦略のなさが馬脚を現した。そして、先の見えない消耗戦の底無し沼に引きずり込まれ、再起不能のダメージを受けた−。
「安倍首相が『アンダーコントロール』などと言って能天気に五輪を招致しているその裏で、破滅が刻一刻と近づいているような気がします」
私たちは今、転換点にいるようです。
名古屋市西区の環境システムコンサルタント浜田尚さん(90)は「事故で発生した汚染水(主にトリチウム汚染水)を海に流すことは大変な間違いです。絶対に許してはなりません」。
トリチウムは、三重水素とも呼ばれます。水素と同じように酸素と結合して水になっていますが、ベータ線という放射線を出して崩壊する放射性同位体です。
産廃処理施設の設計、施工に半世紀携わった経験を踏まえ、病床からの訴えです。
機械工学が専門という名古屋市緑区の会社顧問小林久夫さん(76)は「原子力関連施設ほど危険極まるものはないだろう。たとえ可能な限りの現代最高の大型コンピューターを駆使したところで、人間が望む理想のエネルギーが確保できるわけでもない」と疑問を投げかけます。
そして「この国は、原子力に頼ることはできない。平和事業のための新エネルギーの開発が使命である」と強調しています。
間もなく六回目の新年です。しかし、イチエフの廃炉には少なくとも四十年。まだ長い道のりです。私たちもともに考え続けなければなりません。福島とこの国の未来について。 (飯尾歩)