新学習指導要領 質、量の負担増が心配だ - 毎日新聞(2016年12月25日)

http://mainichi.jp/articles/20161225/ddm/005/070/100000c
http://archive.is/2016.12.26-004111/http://mainichi.jp/articles/20161225/ddm/005/070/100000c

明治以来の均質一斉型授業を改め、主体的、対話的な学習で理解と応用力を深めるという。そのためには、一律に「右へならえ」ではなく、各学校教育現場の弾力的な裁量と行政的支援が欠かせまい。
2020年度の小学校から中学、高校と順次全面実施される次期学習指導要領の内容について、中央教育審議会文部科学相に答申した。
「何を教えるか」だけではなく、子供たちが「どう学び、どんな力を主体的に身につけるか」に力点を置く。能動的に課題を探究し、他者とも協働して解決に取り組むような「アクティブ・ラーニング」を全教科に通じる理念とする。
グローバル化、情報化の社会変化への対応も柱だ。小学校の「外国語(英語)活動」を現行の5、6年生から3、4年生に早め、5、6年生の英語は正式な教科とする。コンピューターになじむプログラミング教育も導入される。
高校は教科・科目が大きく再編される。近現代史を中心に内外の歴史と現在とを重層的に学ぶ「歴史総合」や、選挙権年齢の引き下げを契機に関心が高まった主権者教育の「公共」は、現実の時代状況や社会の動きに結びつくものだ。
知識の量ではなく、思考力と探究の姿勢などに重きを置く。人工知能(AI)に象徴される急激な知的環境の変化に対し、試行錯誤しながら他者とも力を合わせ、目的を持って感性豊かに未来を創造する人間の力を育てたいという。
そうした理念は重要だが、次期指導要領を実践するには条件整備を急ぐ必要がある。
文科省は、例えば小学校の英語について、リーダー的教員の育成と研修の拡充、外国語指導助手(ALT)ら外部人材の活用策など支援策を急ぎ講じるという。
だが、授業時間数が現行の指導要領で満杯状態で、どう英語の増加分を確保していくか。授業の短時間分割などが考えられているが、確たる解決策はない。
また、「歴史総合」や「公共」は現実の国際問題や政治テーマなどをどう教材化できるか。外部からの介入で教える側が萎縮することはないか。そうしたことも含め教育行政も学校現場も共通認識を持ち、懸念をぬぐっておきたい。
いわば、量も質も、という転換である。子供が主体だが、学校や教員も主体的に取り組み、対話し、工夫を重ねる必要がある。
学習指導要領は、もとより各教科・科目の項目内容を100%消化する必要はない。過ぎた負担は学習効果上もマイナスではないか。「加減」も創意工夫のうちである。