東海第二の安全協定見直し 足踏み続く タイムリミットは来秋:茨城 - 東京新聞(2016年12月22日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201612/CK2016122202000186.html
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東海第二原発東海村)の事業者の日本原子力発電(原電)が、立地・周辺自治体と結ぶ原子力安全協定の見直し交渉が大詰めを迎えている。東海村など周辺六自治体の首長でつくる原子力所在地域首長懇談会(座長・山田修東海村長)は「今後に係る判断を求める時の前までに協定を見直す」とする覚書を原電と交わしている。これにより原電は、二〇一八年に四十年の寿命を迎える東海第二原発の運転期間の延長を申請する来秋までに、協定を改定する必要がある。周辺自治体が権限拡大を求めて間もなく五年。再稼働の事前協議条項が改定されれば全国初のケースだが、県と首長たちの温度差が表面化し、実現までの道のりは険しい。 (山下葉月)
二十一日、東海村で開かれた懇談会で、原電は協定について初めて考え方を示した。山田村長によると、懇談会側が、村や県と同等の権限を周辺自治体にも与えるように要求したのに対し、原電側は「周辺自治体を(村や県と)同列にはなかなかできない」と回答したという。
懇談会の会合後、山田村長は「原電側は、『真摯(しんし)にやっていく』という言葉の繰り返し。われわれの要求に対し、ゼロ回答に近いものだった」と険しい表情を見せた。一方、出席した原電の山本直人常務取締役東海事業本部長は「事業者として引き続きしっかりと対応していきたい」と話した。東京電力福島第一原発事故以降、訴えてきた協定見直しだが、いまだ足踏みが続く。

原電は一九七四年、原発立地を巡り、県や村などと安全協定を締結した。現在、県と村のほか、日立、常陸太田、那珂、ひたちなかの四市が原電と安全協定を結んでいるが、再稼働の事前協議に参加できるのは立地する県と村に限られるなど、自治体間には権限に差がある。
東海村に隣接する那珂市海野徹市長は「東海村と県だけが原電にものを言えるのはおかしくないか。事故が起きたら、ここはひとたまりもない」とぶ然とする。常設型住民投票条例をつくり、原発の再稼働を市民に直接問う構えだ。ひたちなか市の本間源基市長も「福島の事故を見れば、自治体間に線引きができないのは自明」と訴える。
福島第一原発事故後の二〇一二年二月、脱原発を掲げる東海村の村上達也元村長の主導で懇談会が発足、原電に協定見直しを迫った。関係者は「反原発同盟の性質が強かった」と当時を振り返る。
しかし、村上氏の引退後、原発推進、反対両陣営の意向を酌み、中立の立場を貫く山田村長が座長に就くと、懇談会は態度を軟化させ、明確に脱原発を打ち出せなくなった。山田村長は「発足当初と状況は変わり、収め方は難しくなっている」と打ち明ける。来秋は村長選も控えており、立場を明確にできない事情もある。
県の立ち位置も不透明だ。二十一日の定例会見で、橋本昌知事は「原電と市町村の間で具体的な方向が示されれば、市町村の考えによっては、いろいろと協力することはあり得るかもしれない」とこれまでの発言を繰り返し、態度を明らかにしようとしない。
実際に協定の改定は可能なのか。県原子力安全対策課によると、安全協定は原則、事業者と立地自治体が結ぶ。北海道と静岡県では複数の自治体と締結しているが、いずれも立地自治体以外に事前協議に参加する権限はない。「歴史的にみても茨城は権限を拡大してきた。できない話ではない」とみる。
懇談会は年明けにも、このまま原電に対し強い態度で権限拡大を求め続けるか、権利を得るために落としどころを探るか、対応を協議するという。延長申請を前に、首長らの交渉は重大な局面に差し掛かった。

原子力安全協定の見直し> 東海第二原発の再稼働に際し、県と東海村以外の自治体も事前協議に参加できるようにする。また、原電が現在、県と周辺5市村と結んでいる協定を、水戸市などほかの自治体とも締結する。東海第二原発からおおむね30キロ圏の15市町村でつくる「東海第二原発安全対策首長会議」が協定の見直しを求めている。