国際学力調査 政策見直す鏡にしよう - 朝日新聞(2016年12月11日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12701289.html?ref=editorial_backnumber
http://megalodon.jp/2016-1211-1040-26/www.asahi.com/paper/editorial2.html?iref=comtop_shasetsu_02

「学力オリンピック」として国別順位に一喜一憂するのではなく、教育政策や自らの学校の実践を見直す鏡としたい。
子どもの学ぶ力を測るため、昨年実施された二つの国際機関の調査結果が発表になった。
一つは、小4と中2を対象に4年ごとに行う国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)。もう一つは、科学、数学、読解力の3分野を3年ごとに調べる学習到達度調査(PISA)で高1が対象だ。経済協力開発機構OECD)加盟国を中心に72カ国・地域が参加した。
両方の調査が同じ年にあったのは03年以来だ。このときはどちらも順位の下落が目立ち、文科省が「ゆとり教育」路線から「学力向上」路線にかじを切る一因になった。
今回の結果はどうだったか。
カリキュラムに沿った学力を見るTIMSSは過去最高の点数だった。一方、知識や技能を実生活にいかす力を問うPISAは、科学、数学の順位は上がったものの、読解力が4位から8位になり点数も下がった。
PISAでは説明文や図表など幅広い資料が出題される。これをどこまで理解できたか。
文科省は最近の生徒の傾向について、スマートフォンなどで短文は読むものの、論理的な長文に接する機会が十分でないことを重く見ている。
国立情報学研究所の調査でも、中学生の約半数が教科書の記述を正しく読みとれていないなどの実態が判明した。
次の学習指導要領が重視するアクティブ・ラーニング(能動的学習)として、討論や発表の取り組みが各地で広がるが、言葉や文章の意味がわからなければその土台が成りたたない。
文科省は今後、語彙(ごい)を増やし文章の構成をつかむ指導を現場に求めるという。足元の力を養うことを重視してほしい。
二つの国際調査で、あわせて行われた生徒や学校へのアンケートから見える課題もある。
日本の生徒は、国際平均より科学を学ぶ楽しさを感じず、学習が将来の仕事に役立つとも思っていない傾向がわかった。
改善するには、学習への関心や意欲を高め、社会と関連づける指導が欠かせない。だがPISAのアンケートに「授業準備が足りない」と答えた学校に通っている生徒の割合は3割に上る。加盟国平均の倍以上だ。
子どもの学力を支えるのは教員の授業力だ。校務や部活動に追われ、肝心の授業力が細っていないか。適切な数の教員を配置しているか。学校、自治体、国はぜひ点検してもらいたい。