原発国民負担「過去分」2.4兆円 福島第一処理費倍増21.5兆円 - 東京新聞(2016年12月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201612/CK2016121002000138.html
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経済産業省は九日、自民党の会合や有識者会合などで、福島第一原発廃炉など事故処理にかかる費用が、二〇一三年に試算した十一兆円から二一・五兆円に倍増するとの試算を示した。中でも被災者の損害賠償に充てる費用を捻出するため、「電力消費者は過去に原発の事故に備えた賠償資金を積み立てておくべきだった」として「過去分」の費用二・四兆円程度を原則すべての電力利用者の料金に上乗せする。原発を維持するため、さまざまな形で国民負担が膨らむ。 (吉田通夫)
原発事故の賠償費用は、東京電力など原発を持つ大手電力会社が、契約者の電気料金に「一般負担金」などを上乗せして負担させる仕組みが事故後の一一年にできた。原発を持たない新電力は負担義務がなく、電気料金にも含まれていない。
これに対し、経産省は「本来は電力会社が原発事業を始めた(一九六六年)時から、事故に備えて一般負担金を積み立てておくべきだった」として、大手から新電力に移行した消費者も含め「過去分」の負担金を請求する。現在、大手電力会社の契約者が納めている千六百億円の一般負担金の規模を基に、二〇一一年までに積み立てておかなければならなかった「過去分」は二・四兆円と試算した。
二〇年をめどに大手電力会社の契約者だけでなく、新たに新電力に移った契約者にも、等しく請求し始める方針。経産省は、四十年かけて負担する場合、月に二百五十七キロワット時の電力を使うモデル世帯の負担額は月額十八円だと説明している。
しかし、賠償費用の総額は七・九兆円に膨らむ見通しで、二・四兆円の追加負担を求めても足りない。残りは引き続き東電と大手電力会社の契約者に求めるため、大手の電力利用者は料金がさらに上がる可能性もある。このほか、廃炉費用は一三年試算の二兆円から八兆円へと四倍になる。東電に利益を上げさせて資金を捻出するが、東電管内の電気料金は他社の管内よりもさらに下がりにくくなる。
放射線に汚染された土壌などを取り除く「除染」の費用も二・五兆円から四兆円に増加。取り除いた土壌を保管する「中間貯蔵施設」の建設費一・一兆円も一・六兆円に膨らむ。ともに国民負担の増加につながる。