0歳からの里親広がれ 委託率1.8%の都、積極支援へ - 東京新聞(2016年12月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016120402000134.html
http://megalodon.jp/2016-1205-0915-27/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201612/CK2016120402000134.html

東京都は来年度から、実親と一緒に暮らせない子どもを養育する里親に、ゼロ歳児を積極的に委託する方針を決めた。人見知りが始まると里親との交流が難しくなるため、できるだけ早い時期の委託が望ましいと判断した。ゼロ歳児を含めた児童虐待の都への相談件数は増え続けているが、里親への委託は進んでいない。児童相談所(児相)が、出産前から養育に困難を抱える実親の相談に乗るなど、今後体制を見直していく。 
都によると、二〇一四年度、実親が育てられず保護されたゼロ歳児二百二十七人に対し、里親に託されたのは四人で委託率は1・8%にとどまる。里親に委託した実績がある都道府県で最も低かった。最高は二十四人を委託した北海道の72・7%。背景には、早期に預けることでの委託後のトラブルなどを懸念する都の慎重な姿勢もあった。児童全体を見ても一四年度、都で里親に託されたのは、三千九百六十一人中四百四十五人(11・2%)で全国平均(16・5%)より低い。
都への虐待の相談件数は、〇八年度は三千二百二十九件だったのが一五年度は九千九百九件と三倍以上になっている。一三年度の都の調査では、乳児院にいる子の三割に虐待による心身の障害が残っていた。保護した子どもの処遇などを決める児相の一時保護所での保護期間が長期化するなど、職員の対応が追いつかない部分も出てきている。
六月の児童福祉法の改正で、家庭的雰囲気の中で子どもを養護していくことがより求められるようになったこともあり、都の児童福祉審議会は十一月「乳児期は特定の大人との愛着形成に極めて重要。できる限り早期に養育家庭委託に結びつけることが大切」と提言。ただ、実親の同意が得られにくい実態を踏まえ、「丁寧かつ慎重なプロセス」を都側に求めた。
都は一七年度、望まない妊娠や経済的な理由などで、子育てが困難だと考える親からの相談を、出産前から受け付ける児童福祉司の増員などを計画。里親との仲立ちも積極的に進めるため、乳児院を中心にした里親への事前研修などにも予算を計上したい考えだ。戸籍上の親子となる「特別養子縁組」を前提とした里親への委託にも力を注ぐ。
都内の里親ら約二百六十人が参加するNPO法人「東京養育家庭の会」の青葉紘宇(こうう)理事長は、「赤ちゃんを養育家庭に託すのは、実親にも児相にとっても不安かもしれないが、社会全体で乗り越えていく問題だ」と話している。