(余録)18世紀ロンドンのコーヒーハウスのいくつかは… - 毎日新聞(2016年12月1日)

http://mainichi.jp/articles/20161201/ddm/001/070/123000c
http://megalodon.jp/2016-1201-0904-16/mainichi.jp/articles/20161201/ddm/001/070/123000c

18世紀ロンドンのコーヒーハウスのいくつかは会員制賭博場だったという。当時の2大政党、トーリー党ホイッグ党はそこを会合に使っていた。どうも政治論議とギャンブルが一緒に行われていたらしい(増川宏一(ますかわこういち)著「賭博2」)
政治家とギャンブルといえば、こんな言葉もある。「ギャンブラーとはスロットマシンに賭ける者のことだ。私はスロットマシンを所有する方がいいね。胴元はいい商売だ」。こちらはトランプ氏で、今ではカジノの経営者だった人物が米大統領になる時代となった。
さて、まさかトランプ氏の勝利に刺激されたわけでもあるまい。日本でカジノを解禁する統合型リゾート(IR)整備推進法案がきのう審議入りした。自民党は今国会の成立をめざすというが、民進党は審議入りに反発、与党公明党も早期採決には慎重姿勢を見せる。
この通称カジノ法案、海外の観光客誘引と地域振興の決め手として超党派の議連が提出し、安倍政権も成長戦略の柱として期待している。しかし、ギャンブル依存症をはじめとする負の社会的影響への懸念は根強く、そもそも経済的効果すらも疑問視する見方がある。
ここは外国の実例を踏まえ、カジノの功罪の国民的検討がなされるべきだろう。なのに驚いたのは自民党があすの衆院委採決、6日の衆院通過を提案する急ぎようだ。制度の策定は法案成立後でも、これでカジノ解禁が既成事実となればあぜんとする国民が多かろう。
どうかカジノの効用を楽観する人々こそ冷静な審議を尽くしてもらいたい。健全で望ましい市民社会を政治家のギャンブルの賭け金にしてもらっては困るからだ。