元SEALDsメンバーが見た韓国デモ 「抗議の声で政治変わる」 - 東京新聞(2016年11月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201611/CK2016113002000233.html
http://megalodon.jp/2016-1201-0904-47/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201611/CK2016113002000233.html

条件付きながら辞任を表明した韓国の朴槿恵(パククネ)大統領。原動力となったのが百五十万人(主催者発表)の抗議デモだ。二十六日、ソウル都心を埋め尽くした群衆の中に、昨年八月の安全保障関連法制反対デモを率い、夏に解散した学生団体SEALDs(シールズ)元メンバー、矢部真太さん(24)=玉川大四年=がいた。「デモで政治が変わると証明された」。日本とは桁違いの行動力を探ろうと訪韓した矢部さんに同行取材すると、生活にデモが根付き、当然のように路上で声を上げる市民の姿が目の前に広がっていた。
横殴りだった雪がやんだ二十六日午後四時、都心はどこも人であふれていた。若者や家族連れが目立つデモ隊は、太鼓を打ち鳴らしながら大統領府の二百メートル手前まで進む。地鳴りのような「朴槿恵は退陣しろ」の喚声が腹に響く。矢部さんはデモ隊の前に回り込み、カメラを構えた。
シールズ結成当初から撮影・デザインを担当した中心メンバー。昨年八月三十日の安保反対集会は主催者発表で十二万人が参加したが、韓国は規模が違う。授業やアルバイトの合間を縫って駆け付け、路上で参加者に「学校でも政治の話をするの」「デモを否定する友人はいないの」と日本で感じていた疑問をぶつけた。
大学生二人組の宋才恩(ソンジェウン)さん(24)は「学校でみんな話題にしている。不当なことに対して声を上げるのは当然」。高校生三人で来ていた金秀鐘(キムスジョン)さん(18)も「私たちが積極的に動けば政治が変わる。国民が国の主人だから」と答えた。
シールズは活動中、考え方の異なる人々から多くの批判や中傷を受けた。「ネットで個人攻撃も受けた」と矢部さんが語ると、大学生の具栄書(グヨンソ)さん(23)は「韓国では考えられない。なんでだろう」と驚いた。
九時間ほど歩き回り、やっと人がまばらになり始めた深夜、カップルがプラカードを持ったまま寄り添っていた。「デモと普段の生活の差があまりないんだな」と矢部さんがつぶやく。腹ごしらえに入った食堂はデモ参加の若者であふれ、焼酎片手に政権批判で盛り上がっていた。
翌午前一時すぎ、デモ中心地の光化門広場。旅客船セウォル号沈没事故直後から真相究明と犠牲者追悼のため広場を占拠するテントに、多数の人が残っていた。「これがデモの源か。多くの修学旅行生が犠牲になり、若者が社会や政治を身近に考え始めたんだ」とふに落ちた様子の矢部さん。
「韓国のように運動を続ければ、関心を寄せる人は増えるはず。就職すれば活動は続けにくくなるけれど、これから僕に何ができるだろう」