<山形知事選>当事者意識欠く自民執行部 - 河北新報(2016年11月30日)

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任期満了に伴う山形県知事選(来年1月5日告示、22日投開票)で、自民党山形県連は独自候補の擁立を断念した。立候補を表明している現職吉村美栄子氏(65)の無投票3選が現実味を増す。県内三つの衆院議席を独占し、県議会では最大会派を擁する「自民王国」の山形県で、不戦敗を選ばざるを得なかった内幕を探る。(山形総局・宮崎伸一)

◎自民候補擁立断念(上)遠い一枚岩
<衆参3議員欠席>
「あり得ないと思った」。複数の県議が口をそろえた。
27日午後、自民党県連本部で開かれた支部長・幹事長選対合同会議。執行部席に着いていた県選出の国会議員は、県連会長の遠藤利明衆院議員(1区)だけ。鈴木憲和(2区)、加藤鮎子(3区)、参院の大沼みずほ(山形選挙区)の3氏の姿はなかった。
知事選は4年に1度の県政界のビッグイベント。「党の意思決定の場にいるはずの国会議員が、どうしていないのか」。その疑問こそが、今回の不戦敗を読み解く鍵となる。
選対会議を欠席した理由について、鈴木氏は「出席したかったが、同じ時間帯に小国町で自身の国政報告会があった。会議の案内が来たのは3日前で、変更できない予定もある」と説明。「それを含めて、県連執行部とのコミュニケーション不足はあった」と率直に認める。
ある支部長は「遠藤会長の主導で擁立作業は進んでいたが、この間、誰を相手に、どんな工作をしたのか。そんな基本的なことさえ執行部の間で共有されていない」と明かした。
「3人の国会議員がそろって欠席したのは、執行部批判の意思表示ではないのか」。そんな勘繰りさえ出ている。

<県議団にも不満>
執行部への不満は県議団の間にもあった。
「遠藤会長を推す声が大勢を占めた」。県連の金沢忠一幹事長は9月18日、所属県議でつくる知事選選考委員会で出た結論を遠藤会長に報告した。
「遠藤会長が出馬できないのは織り込み済みだった」と振り返るのは、県議の一人。それなのに、あえて無理な注文を付けたのは「候補者選びを県議に押し付けている会長以下、国会議員に対する抗議だ。当事者としての真剣さが感じられなかったからだ」と解説する。

<弱体化ぶり露呈>
それから2週間後。予想通り、遠藤会長は出馬要請を断った。そして、浮上したのが県議の大内理加氏(53)=山形市選挙区=の擁立論だった。
大内氏が立候補の前提として挙げたのは「党が一枚岩になる」との条件。一見簡単なようにして、国会議員団、県議団にすきま風が吹く県連にとって、実はこれが難題だった。
立候補に前向きな姿勢を見せながら、大内氏も複雑な事情を抱えていた。自らの後援会の中心的な存在であるヤマコー(旧山形交通)の平井康博社長が4月、吉村知事の支援組織「山形経済人の会」の会長に就任。自身の後援会組織すら一枚岩となりきれない要素をはらんでいたからだ。
知事選が2回連続して無投票になれば東北では初めてとなる。政権党でありながら、有権者に候補者という選択肢すら提示できないほどの足並みの乱れ、弱体化ぶりを露呈した今回の擁立断念劇に、党内の危機感は一層深まっている。