LGBT差別解消 進まぬ法整備 与野党にズレ、歩み寄れず - 東京新聞(2016年11月22日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201611/CK2016112202000116.html
http://megalodon.jp/2016-1122-0920-17/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201611/CK2016112202000116.html

性的少数者(LGBT)への差別を解消する法整備の議論が足踏みしている。七月の参院選前に国会で法制化の動きが活発化したが、自民と野党で考え方に違いが大きく歩み寄れなかった。先進各国で法整備が進む中、与野党とも世界の注目が集まる二〇二〇年東京五輪を意識するが、見通しは立っていない。LGBTの当事者らは集会や署名活動で機運を盛り上げる。 (奥野斐)
インターネットで署名活動を展開しているLGBTの当事者らが十六日、国会内で法整備を求めて集会を開催。百人超の関係者が集まった。戸籍上、女性として生まれたが自分を男性と認識する性同一性障害の当事者は「自分がおかしいのかと悩み、十七歳で自殺未遂をした」と打ち明けた。「家族にもずっと隠して生きているのがつらかった」(レズビアンの女性)など切実な訴えが続いた。
集会の実行委員長でゲイの松中権(ごん)さん(40)もマイクを握り「当事者を救うセーフティーネットとして、差別はダメだと言える法律が必要だ」と求めた。
集会には、LGBTに関する超党派議連会長の馳浩衆院議員(自民)も姿を見せた。これに先立つ十四日、馳さんは議連総会で法制化作業の継続を確認し、「(与野党が)互いに理解し合わないと十年たっても法律はできない」と危機感を示した。
LGBTの差別解消を目指す法案は一月、旧民主党が法案骨子を発表。恋愛や性的な感情がどの性別に向かうかの「性的指向」と、自分の性別をどう認識するかの「性自認」を理由にした差別を禁じる内容で、政府に基本方針の策定を義務付けるとともに、行政や企業が当事者を差別することを禁止した。これを基に野党四党は五月、法案を国会に提出。筆頭提出者の西村智奈美衆院議員(民進)は「差別禁止を明記し、実効性のある法案にした」と話す。
一方、自民党も二月、党内に特命委員会を発足させた。だが「自民党は関心が薄く、法整備が必要な実態を知らない議員も多い」とある当事者は懸念する。参院選前に公表された党の基本的な考え方に「差別禁止」は盛り込まれず、LGBTを巡る「理解増進」にとどまった。法案は今も提出されていない。
国連人権理事会は五年前、性的指向などによる差別問題に取り組む決議を採択し、先進国の多くでLGBTの差別を禁じた法律が成立。国際オリンピック委員会も二年前、五輪憲章性的指向による差別禁止を加えた。LGBTの問題に詳しい中川重徳弁護士は「日本でも、理解促進と差別禁止を車の両輪に法制化を進めるべきだ」と強調した。

◆不利益 職場でも学校でも
LGBTの当事者はどんな場合に不利益を受け、苦しんでいるのか。当事者団体などの全国組織「LGBT法連合会」は事例をリスト化、公開している=CG。
事務局長代理の綱島茜さんは「現状は相談先も少なく、相談相手に知識がないと、周囲に当事者だと知られてしまうなど二次被害もある」と説明する。そのうえで「差別が何かという基準を社会で共有し、当事者の困難が解消されるよう体制を整えるべきだ」と訴える。
<LGBT> レズビアン、ゲイ、両性愛バイセクシュアルと、身体と心の性に違和感を持つトランスジェンダーの頭文字をとった総称。国内の20〜59歳を対象にした調査(2015年電通調べ)では、7・6%を占めると推計された。