新任務「9条逸脱の恐れ」 米退役軍人が「駆け付け警護」に警鐘 - 東京新聞(2016年11月18日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201611/CK2016111802000130.html
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米国の退役軍人らの会「ベテランズ・フォー・ピース」(VFP)のメンバー二人が十七日、東京都内で記者会見し、アフガン戦争とイラク戦争に従軍した経験を語った。南スーダンに派遣される陸上自衛隊への「駆け付け警護」など新任務付与が決まったことで、現地で起こり得る事態と憲法との関係にも触れ、警鐘を鳴らした。 (石原真樹)
 二人は、元陸軍のロリー・ファニングさん(39)と元海兵隊マイク・ヘインズさん(40)。市民団体「安保法制に反対する海外関係者の会」(OVERSEAs)の招きで来日した。
同団体発起人の武井由起子弁護士(第一東京弁護士会)らによると、VFPは第二次大戦以降の戦争を経験した退役軍人や家族、趣旨に賛同する市民が一九八〇年代につくった。
米国を中心に百二十以上の支部があり、会員は数千人。平和構築を目的に退役軍人や戦争被害者の支援、戦争体験を広く伝える活動を続けている。二人は二十八日までの間、都内や神奈川県内などで講演したりデモに参加したりする予定。
武井弁護士は「戦争を経験した彼らがどんな議論をしているのか、多くの人に知ってほしい」と話す。イベント予定はフェイスブックで「ベテランズ・フォー・ピース」で検索できる。

◆敵か市民か見分けられぬ ロリー・ファニングさん
二〇〇一年の米中枢同時テロの数カ月後に入隊を決めた。大学を卒業したてで何万ドルも学費のローンがあった。米国では軍に志願すると返済支援してくれる。でもそれより、9・11のようなことが二度と起こらないよう、奉仕したかった。
〇二年二月に入隊。アフガニスタンに行ってびっくりしたのは極度の貧困だ。人類史上最強の軍備を持つ米国が、地上で最も貧しい国の一つを攻めていた。
タリバンはどこだ?」と住民に聞き、通報した人にカネを渡して通報された家に踏み込み、従軍可能な年齢の男性は袋をかぶせ収容所に連れて行った。でも、タリバンとは無関係だったことがしょっちゅうあった。〇四年に除隊した。
イラクやアフガンと、今の南スーダンも同じ図式。誰が敵か市民か見分けられない。(安全保障法制下の新任務で)日本が自衛隊を派遣すれば、憲法九条が規定する自己防衛の趣旨を外れる。武器を持てば制圧しかできない。現地の人が求める食料やインフラ提供など、ほかにやれることはある。

◆自分自身がテロしていた マイク・ヘインズさん
一九九四年に入隊し、二〇〇三年にイラクに攻め込んだときに海兵隊の特殊部隊にいた。目的は大量破壊兵器の発見と、テロと戦うこと。どちらもうそだった。
バグダッドでは情報を基に家に押し入った。玄関に爆発物を仕掛け、爆発と同時に中に入ると、ほとんどは一般の家庭。年配の女性を壁に押し当てて脅したりした。六歳か七歳くらいの女の子が「ママ、ママ」と泣き叫んだ声が今でも耳から離れない。やっていることの恐ろしさを感じた。
現地の人は自分たち以下の人間で殺してもいいんだと思い込もうと「野蛮人」などと蔑称で呼んだ。従軍できる年齢の男性は収容施設に送り、家に戻れなかった。僕らは死と破壊をもたらし、大切な家族をばらばらにした。自分自身がテロをしていると自覚した。
〇四年に退役すると、まず怒りの感情が起こり、次に自分や周囲を非難するようになった。前向きにやっていく気持ちになるまで十年かかった。自分の手を他人の血で染めることは絶対にしてはならないことだ。