鶴保沖縄相 担当閣僚の資格を疑う - 朝日新聞(2016年11月12日)

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沖縄を担当する閣僚としての資格があるのか。そんな疑念を抱かざるを得ない発言を鶴保庸介沖縄・北方相が続けている。
沖縄県の米軍北部訓練場の工事現場近くで、大阪府警の機動隊員が、抗議活動をしていた人に「ぼけ、土人が」などと言い放った問題についてだ。
先月の記者会見では「県民感情を損ねているかどうかについて、しっかり虚心坦懐(きょしんたんかい)に、つぶさに見ていかないといけないのではないか」と述べた。
さらに今週の参院内閣委員会では「『土人である』と言うことが差別であると断じることは到底できない」と答弁した。
まったく理解できない。
かつて国会で「土人」が論じられたことがある。アイヌ民族を対象にした「北海道旧土人保護法」が1997年に廃止される前のことだ。
法律の名称そのものが差別ではないか。そう問われた自民党の厚生相は「差別的な響き」だと認め、「現在の社会通念に照らして適当ではない」と明快に答えていた。
今回も大阪府警は「軽率で不適切な発言で警察の信用を失墜させた」として機動隊員を処分した。菅官房長官は「発言は許すまじきこと」と指摘。金田法相も「土人発言」は、「不当な差別的言動」だとの認識を示している。これらを鶴保氏はどう受け止めるのか。
鶴保氏は内閣委で「現在、差別用語とされるようなものでも、過去には流布していたものも歴史的にはたくさんある」とも語った。
これも意味不明だ。
すべての差別用語はかつて多くの人々が口にしていた。そこに相手を侮蔑する意味合いが込められたから、言葉を受けた側が傷つき不快感を示した。その積み重ねで徐々に使われなくなってきたのだ。
鶴保氏は米軍普天間飛行場辺野古移設計画をめぐる政府と沖縄県の訴訟について「注文はたった一つ、早く片づけてほしいということに尽きる」と語ったり、沖縄出身の自民党衆院議員のパーティーで、選挙結果と政府の沖縄振興策が「リンクしています」と述べたりした。
明治以来、政府は沖縄に差別と苦難の歴史を強い、いま、沖縄の民意に反する辺野古移設に突き進む。政府と県の対立を解きほぐす任に当たるべき閣僚の言動が、両者の溝をいっそう深めている現実は看過できない。
「沖縄相 ならば『土人』と呼べますか」
この今週の「朝日川柳」の一句に鶴保氏はどう答えるのか。