記述式入試 問題例示し議論深めよ - 毎日新聞(2016年11月9日)

http://mainichi.jp/articles/20161109/ddm/005/070/033000c
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2020年度に現行の大学入試センター試験に代わって新共通テスト「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」が始まる。目玉は、国語と数学の一部に導入される記述式問題だ。その国語について、文部科学省が実施案を示した。
問題を難易度で2種類に分け、解答字数に差異をつけたり、採点を民間委託したりして大学の負担を軽くし、利用拡大に腐心する。
だが、詰め込み暗記知識ではない思考力、表現力を見る記述式本来の目的は、それで達せられるのか。肝心な目的を見失わないか。
文科省の案によると、想定しているのは、難度が高く、解答の字数が比較的多い問題▽難度は中程度で、解答の字数も40〜80字と短い問題−−の2種類だ。
その2種類のうちから、各大学の指定によって受験生は解く問題を選択することになる。

焦点の一つは採点だ。
文科省が今回示した案では、難度が高い問題については、受験生の出願大学が行う。中程度の短文解答の問題については、大学入試センターが民間に委託して行い、結果は1点刻みではない段階別評価にして受験生の出願大学に提供する。
文科省は当初、大学での採点のみを想定していたが、大学側には「負担が大きすぎて対応が難しい」などという反発もあった。
そうした事情を踏まえ、新テストが国公私立にわたって広く利用しやすくなるよう、記述式問題に相対的に簡易なパターンの選択が加えられた格好だ。

詰めるべき課題は多い。
そもそも40〜80字で思考力や表現力が測れるのか。民間委託の採点で基準などにばらつきは生じないか。50万人以上が受ける巨大試験で、効率と公平を保つ難しさだが、徹底したチェックが必要だ。
また、記述式は個別の2次試験で独自に行っている大学もある。文科省は、国立大でも記述式を実施しているのは約4割にとどまるとし、新テストの有用性を挙げるが、個別試験での本格的な記述式普及も働きかけるべきだろう。
大学・高校教育の円滑な接続(高大接続)、問題探究と解決の思考力を養う能動的学習への転換など、教育改革実現の要として提起された新テストである。
しかし、関心がともすれば高校や受験界にとどまり、議論が社会的に広がらないのは、新テストでどのような問題が出されるのか、具体像が判然としないことに一因がある。
工夫された多様な問題例の提示が、新テストのあり方や目的について議論を深め、新たな視点も示すことになろう。