電通長時間労働が刑事事件に 捜索は異例規模 「過少申告」裏付けへ - 東京新聞(2016年11月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201611/CK2016110802000126.html
http://megalodon.jp/2016-1108-1049-36/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201611/CK2016110802000126.html

過労自殺した電通の新入社員、高橋まつりさん=当時(24)=の労災認定から一カ月余り。東京労働局などが七日、労働基準法違反容疑で東京本社などの家宅捜索に踏みきったことで、電通の労働問題は刑事事件に発展した。長時間労働を巡り、厚生労働省が企業などを書類送検した件数は昨年急増。同省は長時間労働がはびこる国内企業の体質を改善するために、一罰百戒の姿勢で臨んでいる。
厚労省が違法な長時間労働の取り締まりを強化する背景には、「過労死防止は国の責任」と明記した過労死等防止対策推進法が二〇一四年に成立したことがある。昨年四月、東京と大阪の労働局に、取り締まり専従の「過重労働撲滅特別対策班」(通称カトク)を設置。厚労省によると、昨年、違法な長時間労働を巡り、全国の労働局が書類送検したのは七十九件。前年の三十九件から倍増し、〇六〜一五年までの過去十年間で最多となった。
今回の捜査の中心もカトクだ。東京本社の家宅捜索だけでも三十人で臨む異例の規模となり、厚労省の担当者は「悪質な事案があれば力を入れて捜査し、長時間労働を削減したい」と話す。
電通では二十五年前にも若手男性社員が過労自殺。〇〇年に最高裁が企業責任を認めた。電通最高裁判決後、オフィスの入退館記録による時間管理などで「適正な勤務管理や長時間労働の抑制を進めてきた」と説明する。しかし、一四〜一五年に違法な長時間労働労働基準監督署から是正勧告を受けていた。電通労働組合の関係者などによると、今も労使協定で定めた月七十時間の上限に収まるよう、上司が部下に過少申告を指示したりするケースがあるという。
元労働基準監督官で社会保険労務士の原論(さとし)さんは「労基署や検察は残業時間の虚偽報告を重くみる。虚偽が裏付けられれば刑事処分を受ける可能性は大きい」と指摘する。電通は過少申告の実態について「当局による調査が続いており、回答を控える」とコメントしている。 (中沢誠、福田真悟)