電通、30人超が残業を過少申告 月100時間減らす 組織的隠ぺいか - 東京新聞(2016年11月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201611/CK2016110802000130.html
http://megalodon.jp/2016-1108-1050-03/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201611/CK2016110802000130.html

昨年十二月に女性新入社員が過労自殺した電通で、三十人を超える社員が一カ月の残業時間を実際よりも百時間以上減らして会社に申告していたことが七日、関係者への取材で分かった。労働時間の過少申告が全社的に広がっている可能性を示している。厚生労働省や各労働局は、会社側が組織的に関与した「残業隠し」の疑いがあるとみて捜査を進める。
亡くなった高橋まつりさん=当時(24)=はうつ症状発症前、電通の労使が合意した時間外労働の上限を超える月百五時間の残業をした。一方、会社に残された記録は労使協定の範囲内ぎりぎりに収まっており、遺族側は「会社から上限を超えないように付けるよう指示があった」として、残業の過少申告があったと主張している。
各労働局は強制捜査に先立ち、既に電通に「臨検」と呼ばれる立ち入り調査を実施。社員の出入りを記録する「入退館記録」と、社員が会社に自己申告した「勤務記録」を突き合わせるなどして、調査を進めてきた。
その結果、三十人を超える社員が一カ月の残業を百時間以上短くして勤務記録を付けていた可能性が判明した。入退館記録からは社員ごとの在社時間が分かり、これを基にして推定した残業時間と、実際に申告された残業時間を比較した。在社時間には休憩時間や私的な理由も含まれるが、厚労省電通の場合、多くの時間を事実上、仕事に使っていた可能性が高いとみている。
厚労省と各労働局は東京本社と三支社を家宅捜索。パソコンの使用実態も調べ、違法な長時間労働の裏付けを進める。法人としての電通や同社の労務・人事担当者らを労働基準法違反容疑で書類送検する方針だが、押収資料を分析して立件対象を絞るには、一定の時間がかかるとみられる。
一方、電通の石井直社長は七日、本社内で社員に労働環境の改善に向けた取り組みについて説明。同社の最大の財産は「人」であるとして、働き方の変革や業務の見直しなどを呼び掛けた。