憲法公布70年 9条改正の必要はない 「いつか来た道」阻止しよう - 琉球新報(2016年11月4日)

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公布から70年を迎えた憲法が大きな岐路に立たされている。
憲法改正に積極的な安倍晋三首相の自民党総裁任期が延長される可能性が高いことや、衆参両院で改憲勢力が発議に必要な3分の2を占めたことを危惧する。
衆参両院の憲法審査会は今月半ばに開かれる。今国会では自由討議などにとどめ、具体的な改憲項目絞り込みの議論は来年の通常国会以降へ持ち越される見通しだ。だが、改憲へ向けて一歩一歩進んでいることは間違いない。
「いつか来た道」を阻止するため、国民が今こそ声を上げねば、取り返しのつかないことになる。

前文の逸脱許されない
憲法前文にはこうある。「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」
文部省が1947年に中学1年社会科の教科書として発行した「あたらしい憲法のはなし」は「これからさき、この憲法をかえるときに、この前文に記された考え方と、ちがうようなかえかたをしてはならない」と記している。
つまり、9条が後退するような改正を憲法は禁じている。前文を逸脱するような改憲は許されないのである。
憲法が揺らぎ始めた責任は、国民の側にもあると指摘せざるを得ない。
共同通信が今年8〜9月に実施した世論調査では、安倍首相の下での改憲に55%が反対し、賛成の42%を上回った。7月の参院選憲法改正は争点にならなかったが、結果的に改憲勢力に3分の2の議席を与えることになった。
国民の憲法に対する考えが変化していることも、憲法を危うくしている。
46年4月に発表された政府の新憲法草案について、毎日新聞世論調査したところ「戦争放棄」への賛成が70%に達した。今年の共同通信の調査では「戦争放棄」をうたった9条改正は「必要ない」49%、「必要」45%である。その差はわずか4ポイントしかない。
調査主体などは違うが、9条を評価する世論が70年で大きく減少したことは、憲法が危機にひんしていることの表れである。
戦後71年、日本の平和が守られてきたのは、平和を希求する憲法の精神が生きているからにほかならない。国民一人一人がそのことを深く認識することが今、求められている。

地方自治学ぶべきだ
県内では日本復帰後も過重な基地負担が続いている。日本の国土面積の0・6%の沖縄に74・46%の米軍専用施設が集中し、米軍関係者による事件事故によって県民への人権侵害が続いている。沖縄では憲法が保障する「基本的人権」は軽んじられている状況にある。
県と多くの県民がその是正を求めているが、安倍政権は一顧だにしない。
「あたらしい憲法のはなし」は「地方自治」について「地方が、それぞれじぶんでじぶんのことを治めてゆくのが、いちばんよいのです。なぜならば、地方には、その地方のいろいろな事情があり、その地方にすんでいる人が、いちばんよくこれを知っているからです」との考えを示している。
これに従えば、名護市辺野古への新基地建設は「沖縄の負担軽減にはならない」との県や県民の指摘を、安倍政権は重く受け止めねばならないということだ。
安倍首相は改憲を急ぐより、在沖米軍基地問題で県民の意見を実現することの大切さ、地方の声を尊重する地方自治の精神を学ぶべきである。
国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を基本原則とする憲法を守ることは、将来の日本の平和と繁栄を保障することにつながる。世界に誇る憲法を改正する必要はない。