不登校調査 多様な姿を受けとめて - 朝日新聞(2016年10月30日)

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子どもたちの不登校に歯止めがかからない。
文部科学省が全国の小中学校を調べたところ、年間30日以上休んだ子は昨年度12万6千人いた。うち90日以上休んだ人数は7万2千人と、全体の57%を占めた。90日といえば年間授業日数の半分近くにあたる。
学校は不登校の子を何とか呼び戻そうと努力してきた。にもかかわらず、この数字である。どの子も一律に学校に通わせようとする今の制度は、壁に突き当たっているといえよう。
ひとくちに不登校といっても実態はさまざまだ。
友人や教員との人間関係に疲れて学校に通えなくなった子。自治体の教育支援センター(適応指導教室)に通う子。民間のフリースクールに居場所を見つけた子。引きこもりの子。貧困や虐待が背景にある子……。
そこに共通の処方箋(せん)はない。
すべての子に学校が最善・最適とは限らない。そう発想を切りかえ、選択肢を増やす。学校や教育委員会は訪問支援などを通じて、子どもの様子を的確に把握する。フリースクールや福祉機関とも連携し、その子に適した学びの場を考え、導く。
そんなとり組みを真剣に進める必要がある。
もちろん簡単な話ではない。
自治体の約4割は教育支援センターをもたず、フリースクール、フリースペースなどの民間施設は都市部に偏在している。それでも、子どもたちの学ぶ権利の保障にむけて努力するのが大人の務めである。
学校が自らのあり方を省みることも欠かせない。いじめや暴力をなくし、学ぶ意味を感じられる場にすることは、不登校の子に限らず、在籍するすべての子の幸せに通じる。
長期欠席の姿や受けとめは、時代とともに変わってきた。
戦後しばらくは働くための欠席が多かったが、高度成長とともに減り、やがて登校拒否という言葉が盛んに言われるようになる。個人の病理とされ、強引に学校に連れだす指導が行われた。だが批判の高まりを受け、国は92年「誰にでも起こりうるもの」と位置づけを変えた。
文科省有識者会議が今夏まとめた報告は、この延長線上に立つ。不登校を「『問題行動』と判断してはいけない」とし、「寄り添い、共感的理解と受容の姿勢を持つ」ことを求める。
多くの子の悩みや苦しみを経て到達したこの考えを、今後の制度や政策にどう反映させていくか。大切なのは、当事者である子を中心に考え、一人ひとりの成長を支える姿勢である。