(筆洗)自民党が「連続二期六年」だった党総裁の任期を「連続三期九年」にまで延長する方針を決めた - 東京新聞(2016年10月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016102702000136.html
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ジャイアンと道ですれ違ったスネ夫が「よっ、人気歌手。これからテレビ局?」と声を掛ける。ちょっと高く、どこか底意地の悪い声が聞こえてきそうである。「ドラえもん」の骨川スネ夫などの声を担当した声優の肝付兼太(きもつきかねた)さんが亡くなった。八十歳。「オバQ」のゴジラや「ジャングル黒べえ」の黒べえ。お世話になった世代は幅広いだろう。
冒頭のスネ夫。歌声を聞けば、耳をふさぎたくなるほど音痴のジャイアンに対し、あからさまなお世辞だが、ジャイアンには効果がある。
お世辞、おべんちゃら、ヨイショ。スネ夫の浅ましき得意技とはいえ、どこか憎み切れないのは、きっと、世間の荒波の中で、われわれもときにスネ夫になるからだろう。
それにしても、なんと大勢のスネ夫であろうか。自民党が「連続二期六年」だった党総裁の任期を「連続三期九年」にまで延長する方針を決めた。これにより二〇一八年九月に任期切れとなるはずだった安倍首相(総裁)は三選を目指して出馬ができる。どう説明しても権勢を誇る安倍さんへのゴマスリと世間は見るだろう。
血で血を洗う権力抗争など、見たくもないが、総裁の座を目指し、政治力、政策力を磨き合ったかつての自民党のギラギラした熱や臭いが懐かしくもなる、今回の方針決定である。
「よっ、三期九年」。党本部から肝付さん演じたあの声が聞こえてくる。