あるべき主権者教育の推進を求める宣言―民主的な社会を担う資質を育むために - 日本弁護士連合会(2016年10月7日)

http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/civil_liberties/year/2016/2016_2.html

宣言全文 (PDF)
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/civil_liberties/data/2016_1007_02.pdf

国は、学校現場への主権者教育の導入に際して、主権者教育の学習内容、教育実践及び学習環境に関し、以下の施策を行うべきである。

  1. 学習内容については、法務省法教育研究会報告書(2004年11月)が提言する「憲法の意義」すなわち立憲主義の学習を重視すべきである。また、現代社会の諸問題を考える上での基本的視点として現行学習指導要領が明記する「幸福・正義・公正」といった法の基本価値の学習も、これまで以上に重視されるべきである。さらに、価値観の異なる他者との理性的議論のために、事実と論理のみに基づいた法律家の議論の仕方(法的三段論法)を政治的・道徳的な議論全般に利用できる技能(例えば「トゥールミン・モデル」と呼ばれる議論の技能)等を習得することが推奨されるべきである。
  2. 教育実践については、第1に、教師の教育的裁量が尊重されるべきである。すなわち、直接に特定政党を支持し、又はこれに反対することを目的とする場合を除き、教師が自己の見解を率直に述べることも有効な教育手法の一つとして許容されるべきであり、また、副教材ないし補助教材の使用について、教育委員会への届出や承認を得ることを求める運用をすべきではない。第2に、外部専門家としては法の原理原則及び議論の専門家である弁護士が中心的に活用されるべきであり、当連合会が推進している弁護士学校派遣事業等を活用して弁護士の授業への参画を積極的に推進するほか、授業づくりにおいても、教師と弁護士が協働して多様な授業を各地で展開していくことが推奨されるべきである。
  3. 学習環境については、学校や地域社会等の子どもたちの身近な生活の場を民主的な議論の場として構築していくために、特別活動の時間を活用する等して、学校や学級内の現実的な問題や課題を議論の素材とすべきである。また、実社会における現実の政治的課題についての子どもたちの自由闊達な意見表明や議論も推奨されるべきである。そのような観点からすると、授業その他の学校教育の場面における政治的活動の一律禁止、放課後や休日における学校内外での政治的活動の必要最小限度の制約を超える制限や禁止、あるいは政治的活動の届出制を定める校則制定を許容する扱いは、表現の自由等の保障の観点から違憲・違法の疑いもあり、見直されなければならない。