参院選違憲状態 抜本改革を迫る警告だ - 毎日新聞(2016年10月15日)

http://mainichi.jp/articles/20161015/ddm/005/070/017000c
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選挙制度の抜本改革を求める司法からの強い警告だと国会は受け止めるべきだ。選挙区定数を「10増10減」して実施された7月の参院選について1票の格差違憲かどうかが争われた裁判で、広島高裁岡山支部は「違憲状態」と判断した。
7月の参院選では隣り合う2県を一つの選挙区とする「合区」が初めて導入され、1票の格差は最大4・77倍から3・08倍に縮小した。しかし判決は「3倍を超える格差があり、著しい不平等状態を解消できなかった」と認定した。
合区を取り入れた改正公職選挙法は付則で、次回の2019年参院選に向けて「選挙制度の抜本的な見直しを引き続き検討し、必ず結論を得る」と定めている。判決は格差縮小に向けた努力を評価し「国会の裁量権を超えるものではない」として違憲とまではしなかった。
ただし裁判所は合憲か違憲かを分ける基準は示さなかった。今回を皮切りに、来月にかけて全国各地の高裁で同種訴訟の判決が続く。厳しい判断が示される可能性もある。
最高裁1票の格差を巡り、前々回の10年参院選に続いて前回の13年参院選についても違憲状態にあると指摘した。これを受けて各党が是正案を検討し、公明党旧民主党などは20選挙区を10に合区して最大格差を2倍未満に抑える提案をした。だが、成立したのは自民党などが提出した10増10減案で、抜本是正には程遠い内容だった。
参院の格差が大きくなりやすいのは、都道府県を選挙区の単位とする仕組みがあるからだ。それを維持するかどうかで政党間の意見が対立した。判決は、この対立を調整できなかった結果、3倍の格差が残ったと指摘した。
参院選では人口の少ない県にも最低2議席が配分されてきた。今後も大都市への人口集中と地方の人口減が進み、格差は一層広がるとみられる。格差を是正するためにはさらに合区を増やさなければならなくなる。しかしそれには弊害が多い。
今回、「鳥取・島根」「徳島・高知」と、4県の選挙区が二つに統合された結果、島根を除く3県で投票率が過去最低を記録した。候補者の存在が遠くなり有権者の関心を低下させた面は否めない。
合区による格差是正は、国会が抜本改革に踏み切れない中での苦しまぎれの対応だった。参院選挙制度改革は格差の観点からだけでなく、衆参両院の役割の見直しとともに考える必要がある。
参院が「分権の府」として地方の声を届ける役割を担うことも選択肢の一つだ。参院の意義についても徹底した議論を怠るべきではない。