安倍首相、だんまり戦術 憲法改正「発言控えた方が」 - 朝日新聞(2016年10月13日)

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改憲勢力が3分の2を超えて迎えた初の本格的な国会論戦で、安倍晋三首相が憲法論争を避け続けている。与野党の対立が強調されれば、将来の国民投票で賛同を得にくくなるとみているからだ。これまで憲法改正の必要性を訴えてきた首相の沈黙に、野党は「ご都合主義」と批判を強めている。
「この国会で、冗舌な首相が貝のように答弁しなくなる場面がある。自民党改憲草案について質問された時だ」。12日の衆院予算委員会で、民進党山尾志桜里氏はそう切り出した。かつて国会で草案への見解を述べていた首相に「(当時は)どういう立場で答えたのか」と詰め寄った。
首相は「(個人的感想などについて答える)義務はない。しかし答える場合もあれば、答えられない場合もある」「憲法審査会が動く前だったから、自民党総裁の立場として機運を盛り上げるために紹介した」などと主張。「憲法改正がリアリティーを帯びる中で、自民党総裁として発言することは控えた方が良いと判断した」と語った。
首相は9月下旬に始まった臨時国会で、憲法改正の論争に一貫して踏み込もうとしない。年明けからの通常国会で「いよいよどの条項について改正すべきか、新たな現実的な段階に移ってきた」と強調してきた姿勢とは一変している。

国民投票見据え、対立ムード避ける
首相が論戦を避けるのは、過去の国会で自民党改憲草案や自らの意欲的な答弁が野党の反発を招いてきた経験があるからだ。自民党憲法改正推進本部の幹部は「憲法改正を進めるのなら、首相はできるだけ憲法改正への言及を避けることだ」と指摘する。
7月の参院選を経て、改憲勢力は衆参両院で3分の2を占めた。ただ、憲法改正には最終的に国民投票による過半数の賛成が必要だ。首相周辺は、憲法改正をめぐり与野党の対立が激化すれば「世論が分断され、国民投票にも影響しかねない」と分析。かつて採決を強行した安全保障関連法や特定秘密保護法のように、国会の数の力で押し切ろうとはしていない。
また、首相は「(衆参の)憲法審査会でしっかり議論してほしい」とも繰り返す。政権内には、衆参の憲法審査会で項目を絞り込んで憲法改正の原案をとりまとめるのは、「早くてもあと1年はかかる」(首相周辺)との見方もある。憲法改正に向けた具体的な筋道が定まる前に、対立ムードが先行するのは避けたいのが本音だ。
一方、野党は反発を強めている。山尾氏は12日の質疑で「逃げ続ける首相の姿勢が、はつらつとした(憲法)議論の障害になっている」と指摘。共産党は「安倍政権下の憲法改正には反対」(小池晃書記局長)との姿勢で、憲法をめぐる国会論戦が深まる様子はみられない。(石松恒)