東京地裁、教諭の旧姓使用認めず 職員識別に「戸籍姓必要」 - 東京新聞(2016年10月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201610/CK2016101202000140.html
http://megalodon.jp/2016-1012-0904-18/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201610/CK2016101202000140.html

結婚後に職場で旧姓使用が認められず戸籍姓を強制されたのは人格権の侵害だとして、中高一貫日大三中学・高校(東京都町田市)の三十代の女性教諭が、運営する学校法人日本大学第三学園に旧姓使用と慰謝料を求めた訴訟で、東京地裁(小野瀬厚裁判長)は十一日、請求を棄却した。女性は控訴する方針。
判決は戸籍姓を「戸籍制度に支えられ、より高い個人の識別機能がある」と指摘。職場という集団の中で「職員を識別、特定するものとして戸籍姓の使用を求めることに合理性、必要性が認められる」とした。
通称としての旧姓使用については「それまで個人の人格の象徴となってきた氏名の一部で、法律上保護される利益」と認めながらも、「戸籍姓と同じように使うことが社会に根付いているとまでは認められない」と述べ、旧姓使用を認めない学校側に違法行為はないとした。
旧姓使用を巡っては、最高裁大法廷が昨年十二月、夫婦同姓を定めた民法の規定が憲法違反かどうかが争われた訴訟の判決で、規定を合憲と認めた上で「結婚前の姓を通称として使うことまで許さないものではない」と指摘。旧姓の通称使用が社会的に広まっていることを踏まえ、「改姓した側の不利益は女性が受ける場合が多いが、旧姓の通称使用が広まることで一定程度緩和できる」との見解を示した。
今回の地裁判決はこれと齟齬(そご)を生じた形となり、原告側は「社会の動きに逆行する判決だ」と批判している。
地裁判決によると、女性は二〇一三年に結婚して戸籍上は夫の姓になり、学校側に旧姓使用を申し出た。学校側は「公人としての教職員の業務遂行には法に基づく呼称の使用が妥当」として認めなかった。
日本大学第三学園の高瀬英久常務理事は「主張が裁判所に理解されたと評価している」とコメントした。