(筆洗)昔の町の本屋さん。どこの本屋さんも入り口の近くの目立つ場所にそのやや背の高いスタンドを置いていた - 東京新聞(2016年10月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016101002000129.html
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昔の町の本屋さん。どこの本屋さんも入り口の近くの目立つ場所にそのやや背の高いスタンドを置いていたと覚えがある。色はたぶん黄色。上部に丸いロゴマークが立っていたのではないか。「小学一年生」など、小学館の学年別学習雑誌の専用スタンドである。
子どもの目にはスタンドの周りが光り輝いて見えたものである。はさまった付録ではち切れんばかりの雑誌を押さえ込むようにビニールのひもでくくられていた。月に一度の自分の雑誌。それがどんなに待ち遠しかったことか。
寂しい話題である。「小学二年生」が近く休刊となる。あのスタンドから「小学三年生」から「小学六年生」まで消えてしまっていたが、これに「二年生」も続き、残るのは「一年生」のみとなる。
創刊は一九二五(大正十四)年。わが身を含め九十一年分の小学二年生がお世話になったことになる。幼少期の読書のとば口になったという方もいらっしゃるだろう。
子どもの趣味の変化に伴って、部数が減っていたそうだが、少子化の影響もあったのだろう。時代とはいえ、かつての読者には自分の通った校舎が取り壊される気分である。
表紙は屈託なく笑った子どもの顔だった。畳の上で寝そべって読んだ、「カーブくんドロップくん」(寺田ヒロオ、七一年「小学二年生」連載)が懐かしい分、休刊の背景となった日本の現状が心配である。