日弁連「死刑廃止を」 終身刑導入を提言 - 東京新聞(2016年10月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201610/CK2016100802000118.html
http://megalodon.jp/2016-1008-2039-14/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201610/CK2016100802000118.html

全国の弁護士が加盟する日弁連が七日、福井市内で人権擁護大会を開き、「二〇二〇年までに死刑制度の廃止を目指す」とする宣言を出席者の賛成多数で採択した。日弁連として死刑の廃止を明確に打ち出したのは初めて。日弁連の木村保夫副会長は会見で「日弁連が一歩踏み出すことで、刑罰制度全体の見直しにつながれば。これまで以上に国民の理解が得られるよう努力し、宣言の実現に全力を尽くしたい」と述べた。
宣言は、死刑制度廃止を目指す理由として、(1)国際社会の大勢は死刑廃止を志向(2)冤罪(えんざい)で死刑が執行されれば取り返しがつかない(3)重大犯罪の抑止効果が乏しい−ことなどを挙げている。
このほか、死刑に代わる刑罰として「仮釈放の可能性がない終身刑制度」の導入を提言。本人の更生が進んだ時は、裁判所の判断で減刑などができる制度にすべきだとしている。
二〇一五年末現在、法律上や事実上死刑を廃止している国は百四十カ国で、世界の三分の二以上を占めており、二〇年に日本で犯罪防止や刑事司法における国連最大の会議「国連犯罪防止刑事司法会議」が開かれる。一四年には静岡地裁袴田事件の再審開始が決定され、冤罪の危険性が改めて認識された。これらが宣言採択に至った背景にある。
日弁連は「被害者の遺族が厳罰を望むことは自然で、十分理解できる」とする一方、「人は時に残酷な罪を犯すことがあっても、罪を悔い、変わり得る存在だ」と主張。刑罰制度全体について、罪を犯した人の改善・更生と社会復帰をより目指すものに改革するよう国に求めるとした。
◆「残虐憲法は禁止」「被害者支援が先」 議論 賛否が白熱
「冤罪(えんざい)は避けられない」「被害者の人権に配慮すべきだ」。日弁連死刑廃止の宣言を採択した人権擁護大会では、廃止派の弁護士と、犯罪被害者を支援する弁護士ら容認派が意見を戦わせ、死刑制度の賛否を巡り、熱のこもった討論を交わした。
廃止賛成派の弁護士らは「人の生命を奪うことは憲法が禁じる残虐な刑罰に当たる」「反省の深まりを見ていきたいとして、死刑を望まない遺族もいる」などと訴えた。
一方、反対派の弁護士らは「遺族が加害者を殺してしまわないように国家が代行するのが死刑。廃止すれば社会秩序が乱れる」「正義感の押しつけにすぎない宣言よりも、被害者支援の徹底が先だ」などと主張した。宣言を総会でなく、参加者が限られて委任状も認められない人権擁護大会で採択したことに疑問の声も上がった。
日弁連は強制加入団体で、退会すれば弁護士の活動ができない。全国の約三万七千人の弁護士に対し、大会に出席したのは七百八十六人。挙手による採決では賛成が五百四十六人、反対が九十六人、棄権が百四十四人。賛成が過半数に達して採択されたが、七割を切った。
人権擁護大会で宣言を採択したことへの批判に対し、日弁連執行部は「これまでも人権問題はこの大会で議論してきた」と説明。テーマを決めるまでに委員会や理事会など複数の段階を踏んでおり、問題はないとの見解を示した。