美浜3号機、審査合格 40年ルールは既に形骸化 - 福井新聞ONLINE(2016年10月6日)

http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/editorial/106173.html
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【論説】原子力規制委員会は、運転開始から11月で40年となる関西電力美浜原発3号機が新規制基準に適合しているとする「審査書」を正式決定した。運転延長を目指す高経年炉の審査合格は高浜1、2号機に次ぎ2例目。改正原子炉等規制法で定める「原則40年」の形骸化が進むことに、世論の反発が強まるのは必至だ。
強い揺れが繰り返し、従来の知見を超えた熊本地震の脅威を契機に、原発の安全性を巡る国民不安も高まっている。美浜3号機は耐震設計の目安となる基準地震動を見直し、最大加速度を従来の750ガルから993ガルへ大幅に引き上げた。使用済み核燃料プールの構造強化が必要だが、それで安全は確保されるか、規制の実効性も問われる。
関電が目指す最長20年の運転延長手続きでは、設備の詳細設計をまとめた工事計画と運転延長の審査を受けなければならない。その期限が11月末である。
手続きが遅れがちな関電対応にいら立ち、尻をたたきながらの審査合格にこぎつけた。まさに「スケジュールありき」の対応といえる。原発の運転期間を原則40年と定め、厳格に対応しているはずの規制委が延命を急がせている構図は規制行政の独立性の観点からどうなのか。
規制委は高浜1、2号機の場合も他の原発を押しのけてまで対応を急いだ。最優先すべきは国民の信頼と理解である。より透明感のある厳格審査の中で適正な判断を下していくべきだ。
関電は今後、2020年春ごろまでに安全対策工事を終え、早期再稼働を視野に入れる。ただ、古い原発特有の課題である電気ケーブルに防火対策を施す必要もある。重大事故時の対応拠点となる緊急時対策所の新設などを含め工事費は1650億円。高浜1、2号機の場合は2千億円を見込むが、さらに費用が膨らむ可能性も出てくる。
運転延長は「例外中の例外」とされてきたにも関わらず40年ルールは形骸化。古い原発の淘汰(とうた)が進む一方で延命措置も着実に進行する。電力事業者が「費用対効果」で判断し、新たな投資に見合う採算が見込めるとみれば20年延長を選択するということだ。
それでは「40年ルール」とは何なのか。東京電力福島第1原発事故を教訓に、同様の過酷事故を起こさないための規制強化であり、原発の信頼回復への方策ではなかったのか。
原発は、炉内構造物や蒸気発生器などは交換できるが、圧力容器は交換しようがない。中性子を浴びて劣化し、割れに至る「中性子照射脆化」現象が懸念されれ、運転が40年に達しない原発で予想を超えて劣化が進んでいる例も確認されている。もっとチェック体制を強化すべきである。
今後、大飯1、2号機も延命が検討されている。40年規制を見直す政治的動きに加え、新増設などを求める電力側の声も高まる。エネルギー基本計画で原発依存度を「可能な限り低減させる」とした政府の基本姿勢が厳しく問われよう。