消えた盛り土 責任の所在は明確に - 東京新聞(2016年10月1日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016100102000191.html
http://archive.is/2016.10.01-003437/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016100102000191.html

豊洲新市場の建物下からなぜ盛り土が消えたのか。残念ながら、小池百合子東京都知事震源地を特定できなかった。官僚組織の自浄能力に疑問符がついた形だ。都議会の本領発揮を期待したい。
「誰が、いつ、どこで、何を決め、何を隠したのか。原因を探求する義務が、私たちにはある」
先の都議会での所信表明演説では、小池氏はそう決意を語っていた。豊洲市場の主要施設の下に土壌汚染対策の盛り土が施されず、いつの間にか空洞が造られていた問題のことだ。
にもかかわらず、公表された報告書は“ゼロ回答”だった。地下の空間化は、建物の基本設計から実施設計の流れの中で段階的に固まっていったという程度のことしか判明しなかったという。
想定内の結果ではある。
なぜなら、殊に官僚機構には身内の失敗を隠したがる風土が根づきがちだからだ。責任逃れや保身を図ろうとする体質は、組織が大がかりになるほど生じやすい。
都職員らに問題の検証を委ねた小池氏の意図も、そこにあったのではないか。所信表明演説で背中を押しながら、自浄能力を試してみたのだろう。そして、やはりその欠如を確信したに違いない。
間髪を入れず、ガバナンス機能を強めるための都庁マネジメント本部を立ち上げ、内輪の不祥事を弁護士に知らせる公益通報制度の整備を指示したのはその証左だ。強い危機感をうかがわせる。
豊洲市場は、六千億円近くを投じて建設された首都圏の新しい台所になる。食の安心安全、人の健康にかかわる深刻な問題の発火点を見過ごしては、失墜した都政への信頼は回復できまい。
意思決定過程をガラス張りにした風通しの良い組織をつくり、真相を引き続き究明してほしい。
無責任体制下で造られた施設では、土壌や地下水の汚染、耐震性への懸念は拭い難い。建設費の高騰ぶりも不自然極まりない。
一方で、盛り土が施されているように事実とは異なる説明を受けてきた都議会も、実態解明に本腰を入れねばならない。市場参加者や都民は誤った情報を垂れ流されてきた。不安と怒りをしっかりと受け止めてもらいたい。
築地から豊洲への市場の移転が迫るまで、問題を見抜けなかった責任は重い。都の自浄機能が働かないとすれば、地方自治法に基づき、強い権限を持つ百条委員会でよく調べるべきだ。東京の自治力が問われる正念場である。