電通とFacebookの不正業務から考える ネット広告の問題点とは? (1/4)加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾 - ITmedia(2016年9月27日)

http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1609/27/news047.html

ネット広告というと、かつては広告枠を一定期間確保したり、所定のクリック数に到達するまで、同じ広告を特定の場所に貼り続けるといった形式が多かった。こうした従来型のネット広告では、掲載料が1カ月当たり10万円、あるいは1000クリック10万円など、分かりやすい価格が設定されていた。これは、基本的に紙媒体の広告と同じ仕組みと考えて良い。
しかし、現在ではこうした従来型のネット広告は少なくなっており、価格をオークションで決める形式が増えている。今回、不正が発覚したのもこのタイプである。
オークション形式では、広告の配信状況を見ながら、常に入札価格を変えていく必要がある。広告主の予算には上限があるので、予算額との兼ね合いや広告を打つ期間、露出頻度などを総合的に考えながら、随時入札価格を決定していく。この作業が思いのほか大変なのだ。

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トヨタは巨大企業であり、広告宣伝にはかなりの人的リソースを割いている。このため今回のような不正に気付くことができたが、多くの企業にとって、こうしたチェックを行う余裕はないだろう。ネット広告における最大の問題は、基本的に広告代理店やメディアからの報告を信用する以外に、広告の効果を判定する材料がないという点である。
この話は、実は海外でも問題視されている。SNS大手のFacebookはくしくも電通と同じ23日、自社の動画広告の平均視聴率時間を過大に算出し、それを広告主に報告していたことを明らかにした。

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テレビの場合にも、以前、似たような不正が発覚したケースがあった。1990年代、一部の地方局において、実際にはCMを放送していないにもかかわらず、広告主からは広告料を徴収するという、いわゆる「間引き」が行われていた。
これはメディア側の不正であり、放送局は虚偽の報告書を広告代理店に送っていたという。代理店側はこれを見抜けず、広告主から料金を請求していたのである。間引きの発覚後、関係者は懲戒処分となり、民放各社は、CMにコードを埋め込む方式を導入するなど防止策を強化した。

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今回の一件は、トヨタという最大顧客の指摘があったので表面化した可能性が高く、同じような不正が慢性的に行われていた可能性は否定できない。電通では年内をメドに再発防止策をまとめるとしているが、業界全体としては、第三者にチェックさせるような仕組みの構築が必要となってくるだろう。